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GOOD COFFEE FARMSカルロスさんの、「水・燃料・電力を使わない」サステナブルな取り組み

2022.02.04
カルロス メレン

多くの生産者は、コーヒー栽培だけで生活できる収入を得られていない小規模農家で、生産性が低く不安定な生産を続けている。加えて、コーヒーの生産プロセスにおける環境汚染にも課題が残る。

この生産者が直面する課題に一石を投じたのが、GOOD COFFEE FARMSカルロス メレンさんの取り組み。自転車を動力とする脱穀機を開発し、小規模農家自ら精製を行うことによりコーヒーに付加価値をつけた。

来日からブランド立ち上げまで

編集部

カルロスさんは、18歳の時に来日されたんですよね。

カルロス

はい、2000年に日本に来ました。それから2011年にダークスコーヒーというブランドを設立しました。

編集部

コーヒーに携わったのは、そのダークスコーヒーが初めてですか?

カルロス

いえ、それより5年ほど前の2006年に個人で生豆を日本に輸入してました。そこから10年後にグアテマラで自転車のプロジェクトをスタートして、2017年から自転車を使っての脱穀が始まりました。グアテマラでは大きなニュースになり、多くの生産者からも連絡がきました。

カルロス メレン
Carlos Melen (カルロス メレン)。GOOD COFFEE FARMS株式会社代表取締役。グアテマラ出身。18歳の時に来日し、いくつかの職を経て2011年にRKコーポレーション株式会社を立ち上げ、ダークスコーヒーブランドを作る。その後グアテマラに戻り精製処理工場開発をスタート。自転車を使用した独自の精製処理が現地で噂になり、多くの農家にノウハウを教え、2017年ダークスコーヒークオリティシステムを立ち上げた。2019年GOOD COFFEE FARMSに名称変更。

不安定な生産を続けている小規模農家

編集部

グアテマラでは多くの生産者が零細農家だと聞きました。

カルロス

グアテマラだけでなく世界のコーヒーマーケットがそのような状況です。これは大きな問題です。

編集部

生産工程で一箇所に集められゴチャ混ぜにされる。その間にもいろいろなところでお金が引かれていくわけですよね?

カルロス

はい、中間業者が入ってます。グアテマラでは12万5000人の生産者がAnacafeという協会に登録してます。私たちの生産者団体には200人超いますけど、5人くらいしかAnacafeに登録してないです。

登録しているデータでは12万5000人いるのに、日本のコーヒーショップではグアテマラコーヒーは大体同じ生産者の名前しかないんですね。その生産者はヨーロッパやアメリカでも同じ生産者の名前が出ることが多いんです。生産者の3%しかビジネスになっておらず、97%は小規模の農家で、コーヒー栽培だけで生活できる収入はないんです。

編集部

ほとんどの農家さんの生産性が低いわけですね。その協会は国が取りまとめをされてるんですか?

カルロス

プライベートが多いですが、組合もあって私たちにもオファーがありました。

ただルールがいっぱいあって、組合に参加しているグループで、いろいろなことを決めないといけないんです。とは言っても、そもそも皆ノウハウがないんです。決めるのにも時間がかかるし、どうすればいいかわからず時間だけかかって何もならないことが多いんです。

編集部

それこそGOOD COFFEE FARMSの活動は革命的なことなんですね。

カルロス

GOOD COFFEE FARMSに所属するまで、彼らが行うのは、コーヒーチェリーの収穫まで。コーヒーチェリーのまま中間業者に販売していました。

所属してからは、精製処理をして生豆の状態で販売しています。

編集部

農家さん自ら精製処理をするようになったわけですね。

カルロス

そうです。

編集部

グアテマラのGOOD COFFEE FARMSの農園は、どれくらいの農家さんが働かれているんですか?

カルロス

生産者団体になったので、団体の中では200人強の登録があります。そこで日本の文化みたいなものを作りました。エントリーレベルからビギナー、ミドル、アドバンスまであります。

カルロス メレン

自転車を動力とする脱穀機

編集部

精製方法でドライウォッシュドというのがありますけど、ウォッシュドとはまた違うんですか?

カルロス

正式にはドライ・バイシクル・パルピング・ウォッシュド・プロセス。自転車で水を使わないでパルピングする。その後のプロセスはウォッシュかハニー。ナチュラルは皮を取らないから自転車は使わないです。特にウォッシュドは多くの水を使うことに問題がある。コーヒー精製で使われる大量の水は、十分な浄化処理がないまま河川に放流されます。

編集部

衛生問題もあるのですね。

カルロス

そうです。ですのでナチュラル以外のドライウォッシュドとハニーの精製処理には、全てで自転車を使います。

編集部

他にも水を使わないメリットはありますか?

カルロス

コーヒーチェリーの糖分が水で流されず、長い時間豆に吸収されるので、甘みを感じるフルーティーな風味に仕上がります。

編集部

自転車での脱穀は漕ぐのが大変だと思うのですが。

カルロス

コーヒーチェリーを入れてても重さは変わらず軽いです。

編集部

何時間くらい漕いでるんですか?

カルロス

大体1日2時間から3時間くらいパルピングします。収穫時期の3〜4ヶ月くらいに、毎日少しずつハンドピッキングしてパルピングします。

編集部

皆んな嫌がりそうですね。

カルロス

その逆です(笑)

自転車で脱穀する人はスマホ見ながら座って作業ができるけど、他の作業の人は、重い作業してることが多い。だから皆んな自転車で脱穀やりたいって取り合いの喧嘩になる(笑)

編集部

ドライウォッシュド、ハニー、ナチュラル、3つの精製方法の使い分けはあるのですか?

カルロス

まずはドライウォッシュド、ハニー、ナチュラルが、どれくらいの量を必要とするのかのプランを決めます。そこから、どこの農園で精製処理をやるかを考えます。ハンドピックでコーヒーチェリーの熟したレベルや天気によっては、来週の予定だったものを今日に変更することようなこともあります。

編集部

判断は現地の方がするんですか?

カルロス

毎日連絡してます。WhatsAppでビデオ写真とかiPhoneのキャパをオーバーするくらい使って(笑)

初めの頃に比べれば随分と楽になりました。今は現地の人たちで決められるようになってきました。

編集部

先ほどのランクでアドバンスになれば判断できるみたいな。

カルロス

そうです。アドバンスの人は直接私と連絡ができます。

編集部

ランクには、試験とかあるんですか?

カルロス

ありません、経験です。夢はハンドピッキングや精製、発酵までできる学校を作りたい。まだ若くて小さな会社なのでこれからです。

カルロス メレン
編集部

中米のコーヒーといえばグアテマラは大きいですよね。

カルロス

グアテマラのコーヒーは、中米の中でも歴史とボリュームがあります。それと、他の国はトレンドでアップダウンがありますが、グアテマラは常に安定しています。

グアテマラは農園の標高がほとんどが1300mを超えます。隣の国は大体900〜1300mですね。

GOOD COFFEE FARMSについて

編集部

GOOD COFFEE FARMSは何人で運営されてるのですか?

カルロス

日本では3人、あとはコラボレーションで何名かいます。まだ小さいですけど、今募集中です(笑)

編集部

生豆は何店舗くらいに豆を卸しているんですか?

カルロス

北海道から沖縄まで、100店舗以上と取引してます。今後はロースターがグリーンビーンズをWebからワンクリックで買えるようにできれば。

編集部

カスカラティーのこともお聞きしたいのですが。

カルロス

カスカラティーだけで10ロット以上持ってます!

例えばカツアイ、パチェ、ブルボン、パカマラ、マラゴジペ、それぞれの品種ごとのカスカラを作りました。

編集部

単一品種のカスカラティーで飲み比べができますね!

カルロス

ただ、しっかり処理していないとサビ病のために薬が使われているので注意が必要です。オーガニックなものでも、隣の農園から風で薬が飛んでくることもあります。

カスカラティーはしっかりと処理して安全なものにしますが、それまでのプロセスは色々あって、そこは秘密ですけど(笑)

編集部

農薬を散布すると果肉にも付着するわけですね。

カルロス

言えることは、太陽と自転車を使った、エネルギーゼロで作りあげています。検査は日本に持ってきて東京でします。コーヒーチェリーティーバッグの加工も日本です。ティーバックはプラスチックではなく、トウモロコシを原料とする天然素材の繊維で作ってます。それもサステナブルで面白いポイントです!

GOOD COFFEE FARMS麻袋
Editor & Text & Photos: 疋田 正志 Interview: 疋田 正志、久宗 大雅
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