世界を動かすロースターたちとの共創──Giesen Coffee Roastersの軌跡と未来
オランダに本社を構えるGiesen Coffee Roasters。職人の手によって仕上げられる鋳鉄製の焙煎機は、蓄熱性やプロファイル再現性の高さで世界中から支持を集めている。現在、40カ国以上に販売代理店を持ち、日本では2021年8月に設立されたGiesen Japanがその役割を担っている。
鋳鉄の持つ蓄熱性やプロファイルの再現性が世界的に評価され、World Coffee Roasting Championshipで認定機として使用されるなど、グローバルな評価を得ているGiesen。しかし、その歩みは意外にも小規模からのスタートだった。創業当初、従業員9人という小さなチームで始まったメーカーが、いかにして世界的なブランドへと成長を遂げたのか。
今回、本国オランダから来日したセールスマネージャーMarc Weberさんと、Giesen Japan代表の福澤由佑さんによる対談が実現。Giesenの歴史、焙煎機へのこだわり、そしてこれから描く未来について、両者が熱く語り合った。
Giesen Coffee Roastersの始まりと成長の軌跡
創業からのGiesen Coffee Roastersの歩みについて話していただきましょう。
元々は鉄工所で、そこで焙煎機も作っていた。
2006年に、もっと自分達のモノづくりへの信念に沿った焙煎機を作っていきたいと、Giesen Coffee Roastersというブランドを立ち上げた。当時、従業員は9人しかいなかったけど、今では140人までに成長した。
ブランドとしては後発だよね。
創業は2006年だが、元々は違うブランドの焙煎機を扱っていて、そこからだと45年くらい。その当時から培ってきたノウハウや経験を、Giesenのブランドに生かしている。
世界市場での成功を支えたディストリビューター戦略
日本でも多くのロースターがGiesenを使ってくれています。
当初はヨーロッパを中心に販売をしていたが、この数年で急成長できたのは直販ではなく、40カ国以上にディストリビューターを置いてきたから。そこで、現地のディストリビューター達がロースター達と良好な関係を築き、素晴らしいマシンを提供してきた背景があるから。直販だとこれだけの道が開けなかったと思う。
ロースターとの信頼関係を作って成長してきたんだね。
これまでコーヒーを哲学にしてやっている人たちと歩んできた。SCAをサポートをして10年以上も世界大会の公式マシンとしてやっているが、それはGiesenの信念は常に素晴らしいコーヒーを追い求める人達と共にあり、彼らのアイデアを歓迎し、必要な時には彼らをサポートしてきた。それによって、私たちのブランドはとても強いものになった。
WCRCと世界大会での影響力
なぜ新進気鋭のブランドが、大きなイベントのスポンサーシップをすることができたの?
それはWCRCという競技会のアイデアを、GiesenがSCAに提案をしたからだよ。
それは知らなかった!
2013年に行われた第1回のWCRCの初代チャンピオンは、福岡にある豆香洞コーヒーの後藤直紀さんだ。ローカルのパートナーと作り上げた競技会は、最初は決して大きくはなかったが、今では多くの熱狂的なファンに支持される大会となった。
2022年のイタリアはミラノで行われた世界大会では、7台のGiesenが導入されたみたいだね。
そう。7台全てが同じ環境になるようにセッティングを完璧に行ったよ。Giesen Coffee Roastersの技術チームを誇りに思っている。それは我々だけができることだと思う。
プロフェッショナルなロースターが力を最大限に発揮できるような焙煎機を作れるよう常に努力している。
ロースター文化とGiesenの技術力
日本とオランダでロースター文化の違いはある?
日本もオランダも品質やモノづくりへのこだわり、繊細さというのは共通だ。日本のロースターが使っている生豆のクオリティは素晴らしい。オランダも同様でプロフェッショナルなロースター達は、焙煎における全ての工程をケアしている。だから我々もいい豆からしっかりと味を出せる焙煎機作りをしてる。
競合の焙煎機も進化していると思うけど、考えることはある?
ここから先の10年で、私たちの焙煎機は世界で唯一のポジションを目指す。私たちは何十年もの間、焙煎機を作ることに没頭している。その誇りと経験を生かして、次なる高みを目指すよ。
本国チームが考えるGiesenの強みってなんだろう。
焙煎機の規模にもよるが、ひとつはお客さんの要望に合わせたカスタマイズ性がある。
例えばセンサーの位置を変えるとか、カラーリングなどのエクステアリングなど。「こんな機能が欲しい」という要望があれば、できるだけ添えるようにチームは対応する。
あとはどんな環境でローストしても、ブレない安定性もアピールポイント。それを支えているのが、パスカルによるドラム内の風量の調整であったり、回転数を変えられるところ、またパソコンでプロファイルを保存することで何度でも同じ焙煎ができる再現性。
お客さんと一緒にブランディングやマーケティングから関わっていくという点は重要だね。
その通り。ただ焙煎機を届けるだけではなく、もしお客さんが新しい焙煎工場を作るのであれば、セットアップからパースを書いてデザインも含めてサポートする。それがマイクロロースターであっても、彼らのコーヒー豆を提供できるような場作りをするよ。
Giesen Japanの挑戦と未来への展望
本国の話していた内容は、Giesen Japanとしても同じ気持ち。ただ焙煎機を届けるだけではなく、ロースターさんと一緒に成長していくという形でやっていきたいと思っている。
日本もオランダもそこは共通だ。
新生Giesen Japanとしては、僕らはオランダチームと会話を重ねながら、いち代理店という関係を超えたチームワークで活動している。日本のマーケットの状況をいち早くフィードバックし、一緒に何ができるかをお互い模索し、共に成長していきたい。
オランダのファクトリーの中にはいろいろなプロジェクトチームがある。
例えば、スペイン語が話せたらスペイン語のプロジェクトにジョインしてもらうなど、一つのポジションに留まらず一緒に働いてる仲間が輝けるポジションを常に模索している。まるで家族のようなチーム。だからいいものが作れるんだよ。
2021年にGiesen Japan主催の競技会1st Crack Coffee Charengeを開催したよ。
日本のコーヒー業界を牽引できるような1メーカーとして、今まで以上にこの業界へコミットしていきたい。
1st Crack Coffee Charengeは盛り上がったみたいだね!SCAJでのチャンピオンのブリューイベントはとてもよかった!
焙煎だけではなく、決勝ステージではブリューイングとプレゼンテーションを競技として組み込み、コーヒーの総合格闘技を目指している(笑)
That’s great!
コーヒーマンが一人でも増えてくれたら、楽しい世界になるなと思っている。
日本もオランダも、コーヒー業界はまだまだ可能性を感じている。Giesen Coffee Roastersはそこを支えていくし、世界を動かすロースター達と出会えることを楽しみにしている。
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