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メリタ(Melitta)流コーヒー体験──歴史と技術が生んだフィルターの奥深い魅力

2025.02.20
メリタ アロマフィルター

コーヒーを淹れる楽しみとおいしさを追求する中で、何気なく使っているハンドドリップ器具。その原点は、1908年にドイツの主婦メリタ・ベンツ(Melitta Bentz)が自宅のキッチ ンで発明したペーパードリップに遡る。「家族にもっとおいしいコーヒーを飲んで喜んでもらいたい」という想いが形になり、今では世界中で愛される抽出方法となった。

その精神を受け継ぎながら進化を遂げたのが、メリタのコーヒーフィルターだ。特徴的な台形デザインと一つ穴構造が、美味しさを引き出すための工夫の結晶となっている。特に、メリタジャパン独自のラインナップは、多彩なシーンに合わせた選択肢を提供している。

今回は、これらのフィルターに込められた想いや開発背景を深掘りし、メリタジャパン株式会社の宮本紀久さん、熊崎千夏子さん、村上伸子さんから伺った貴重な視点を交えながら、その魅力に迫る。これを読めば、いつもの一杯がもっと特別なものになるはず。

フィルター開発の原点

編集部

メリタのフィルター開発において、そもそもどんなきっかけや背景があったのでしょうか?

メリタジャパン

今では当たり前のペーパードリップは、ドイツ人の主婦、メリタ・ベンツさんが「自宅で家族にもっとおいしいコーヒーを飲んで喜んでもらいたい」という気持ちから世界で初めて紙でコーヒーを濾す、という発明をしました。

その発明の原点にある思いを受け継ぎ、メリタジャパンでは、「コーヒーを淹れる」が、みんなの「うれしい」を目指した製品・サービスを提供しています。特に日本独自のハンドドリップ用フィルターにおいても、その思いを大切にしています。

編集部

時代や市場のニーズが変わっても、創業当時の思いを守り続ける姿勢が、メリタフィルターの大きな魅力ですね!

メリタジャパン

ありがとうございます。

メリタにしかない創業のオリジンをこれからも大切にしていきたいと思っています。

メリタ
メリタジャパン株式会社。ドイツ発祥のコーヒーブランドメリタの日本法人として1974年に設立。ペーパードリップの考案者として、台形一つ穴フィルターをはじめとする高品質なコーヒー器具を提供するほか、業務用の全自動コーヒーマシンや、エスプレッソマシン、グラインダーなど、コーヒーに関連するマシンを展開。「誰でも簡単においしいコーヒ ーを淹れられる」製品づくりを大切にし、日本市場に合わせた独自の開発にも力を入れている。

なぜ「ドリッパー」ではなく「フィルター」と呼ぶのか

編集部

そういえば、他のメーカーでは「ドリッパー」と呼ばれる器具のことを、メリタでは「フィルター」と呼びますよね。これにはなにか理由があるんですか?

メリタジャパン

日本では一般的に「ドリッパー」と呼ばれる器具ですが、ドリップという概念がない時代に考案されたため、メリタではろ過を意味する「フィルター」と称し、今も受け継いでいます。

抽出の5大要素は、お湯の温度、お湯の量、抽出時間、粉の量、粉の細かさですが、メリタのフィルター開発では、お湯の量と抽出時間をフィルター自体がコントロールすることを大前提としています。

編集部

抽出時間とお湯の量を台形フィルター自体がコントロールするということですね。だから味のブレが少なくなる。

メリタジャパン

すべてのメリタのフィルターに共通していることは、台形かつ一つ穴であることです。円錐型はお湯が抜けやすいのでお湯を分けて入れることでコントロールしなければならないですが、それによってえぐみや雑味が出やすくなります。

メリタ式は蒸らし後、一回でお湯を入れるので湯量もコントロールしやすく、あとは抽出時間を器具がコントロールしているので、えぐみや雑味が出にくく、毎回決まった味を出すことが可能です。

フィルター5種の特徴

編集部

メリタには、さまざまな種類のコーヒーフィルターがありますが、それぞれの特徴や違いについて教えてください。

メリタジャパン

それぞれの特徴や違いについてお伝えしますと。

メリタ クリアフィルター
クリアフィルター「内側のリブでお湯の流れをコントロールして、線まで注ぐだけでおいしいコーヒーが淹れられるのが特徴です。抽出口は真下に付いています。」
メリタ アロマフィルター
アロマフィルター「もともとはコーヒーメーカー開発の中から生まれた製品です。味がただ濃くなるだけではなく、リブを高くしたことで、抽出スピードが早く、抽出口が高い位置にあり、湯だまりがあることで蒸らし効果が高いんです。サイフォン効果で抽出後、しずくが垂れない構造になっています。」
メリタ プレミアムフィルター
プレミアムフィルター「味を調整したいユーザーの多様性に応える製品として誕生しました。台形で一つ穴式はそのままに、自由度の高い淹れ方を楽しむことができる製品として開発しました。」
メリタ edoコーヒーフィルター
edoコーヒーフィルター「メリタジャパン50周年を記念してMade in JAPANプロジェクトとして販売した製品です。東京都指定伝統工芸品、ならびに国の伝統的工芸品である江戸硝子の職人が、一つひとつ手作りで作った逸品で、おもてなしをする時間に使っていただきたい逸品です。台形で一つ穴、というメリタ式ではあるのですが、メリタとしては初めて硝子という素材を使ったフィルターでもあります。」
メリタ 波佐見焼コーヒーフィルター
波佐見焼コーヒーフィルター「400年以上の歴史を持つ長崎県波佐見町の伝統工芸品「波佐見焼」と、メリタの一つ穴抽出技術を融合させた製品です。高品質な天草陶石を使って、透き通るような光沢と凛とした白さが特徴です。波佐見焼の分業制による職人技で製作されてまして、日常使いに適したデザインと機能性を備えています。」

フィルターごとに最適なコーヒーとは? 淹れ方のコツ

編集部

それぞれの特徴が分かりやすいですね!

フィルターによって、おすすめのコーヒー豆やレシピがあれば教えてください。

メリタジャパン

プレミアムフィルターは味調整の自由度が高いので、高価なスペシャルティコーヒーを試しに入れるのにはハードルが高いと感じる方には、まずアロマフィルターやクリアフィルターで試していただきたいです。

多くのドリッパーは抽出における条件が、お湯のかけ方・お湯の量・粉の量など、検証する要素が多いですが、アロマフィルターやクリアフィルターは淹れ方に左右されず、粉の量の増減でコントロールできるため味の検証をしやすいです。

特に苦味やボディ感のあるコーヒーを楽しみたい、という方にはアロマフィルターがおすすめです。

メリタ アロマフィルターとクリアドリッパー
編集部

実際に淹れると、味や香りにどんな違いが生まれるのでしょうか?

メリタジャパン

アロマフィルター、クリアフィルターに関しては、抽出時間をフィルターがしっかりとコントロールするので、未抽出が少なくボディ感・おいしい部分を出せて、かつアフターテイストにざらつきがなく、クリアに抽出できます。

プレミアムフィルターは、実はひとつ穴のサイズやリブにもこだわっています。もっと淹れ方を楽しみたい、という方には、プレミアムフィルターもおすすめです。プレミアムフィルターはアロマフィルターやクリアフィルターと違って注湯目安のラインがないので、ある程度のラインまで淹れたら、落ちるお湯と淹れるお湯を同じ量にしてフィルター内の湯量を一定に保つように淹れてみてください。

こだわりと市場の評価

編集部

開発時に特にこだわった点は?

メリタジャパン

100年以上前の発明当時から、「誰でも、簡単に、おいしいコーヒーを楽しめること」にこだわり続けています。

編集部

市場やユーザーからの反響で印象に残っていることはありますか?

メリタジャパン

大手を含めたロースターさんが、社内テストでメリタのフィルターを使ってくださっていると聞いております!

豆の味の決め手にお役立ていただいている、というところが非常に誇らしくあります。

フィルターを楽しむシーンと使い方のアドバイス

編集部

どのようなユーザー層をターゲットにしているのでしょうか?

メリタジャパン

ユーザー層ではないのですが、製品ごとのおすすめの使用シーンとして、アロマフィルター、クリアフィルターは、特に簡単に淹れられるので、朝の忙しい時間など毎日のコーヒーシーンにおすすめです。

プレミアムフィルターは、さらに自分の味を追求したい方に。

edoコーヒーフィルターは、誰かをおもてなししたい時など、特別な時間に使っていただきたいです。

編集部

初めて使う方へのアドバイスがあればお願いします。

メリタジャパン

コクやボディ感が欲しい場合はメリタのフィルターを試してみてください。

あとはとにかく、難しいことはわからないけど、おいしいコーヒーが飲みたい、という方はぜひアロマフィルターを使ってみてください。1杯分の粉は付属のメジャースプーンで量って8g。蒸らしのあと、線までお湯を一気に注ぐだけです。

メリタ アロマフィルター
編集部

最後に、メリタジャパンについて教えていただけますか?

メリタジャパン

メリタジャパンは2024年に50周年を迎え、原点にあったメリタ婦人の思い、「おいしいコーヒーを淹れたい」「喜んでもらいたい」「喜んでもらえるとうれしい」に立ち返りました。

「コーヒーを淹れる」が、「みんなのうれしい」に。の実現に向け、これからも、コーヒーを淹れる方、提供される方、そしてそのコーヒーを飲み、「おいしい!」と喜ぶ方、そこにいるすべての方にとって「うれしい」につながる、製品・サービスを展開してまいります。

メリタジャパン ショールーム
Photos & Interview & Text & Editor: 疋田 正志
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