クラフトマンシップが息づく焙煎機 ──San Franciscan Roaster(サンフランシスカン)

クラシカルな佇まいと頑丈なつくり。San Franciscan Roasterは、すべてのパーツにいたるまでアメリカ製にこだわったロースターだ。 日本では2025年3月、正規代理店サンフランシスカンロースター ジャパンの始動とともに、本格展開がスタートした。
マシンテクニシャンや焙煎士としてのキャリアも持つ石井フェルナンドさんが、アメリカ本国と直接やりとりを重ねながら立ち上げたこのプロジェクト。彼が「道具以上の何かがある」と語るように、その設計には思想と美意識が宿る。フェルナンドさんの言葉から、この焙煎機が目指すものと、日本でのこれからが見えてくる。
San Franciscan Roasterの設計思想や、どのようなコンセプトで作られてるかをお聞きしたいです。

アメリカ西海岸のクラシックで洗練されたスタイルに着想を得て設計されています。そのデザインは、19世紀末から20世紀初頭のアメリカ産業時代の美意識を反映しており、とくにサンフランシスコ地域に見られる伝統的な機械の造形美にルーツがあります。
設計の根底には、「焙煎という職人技へのロマン」があります。耐久性のある構造、手動による細かな調整、そして職人によるハンドメイドの仕上げが一体となり、技術と伝統を重んじる職人ロースターたちに深い共感を与えています。
他と比べて、San Franciscan Roasterにしかない魅力ってどんなところでしょうか?

信頼性と安定した焙煎結果、そしてメンテナンスのしやすさです。
この基本をしっかり押さえたうえで、設計思想やクラフトマンシップ、ブランドのアイデンティティといった「目に見えない価値」まで感じられる。まさに、職人のための焙煎機だと思います。

使われている素材や、構造的にこだわっている点があれば教えてください。

ドラムには100%スケジュール40の無垢の炭素鋼を使っています。フェイスプレートの厚さはモデルによって異なりますが、3kg釜の場合、おおよそ6.35mmです。鋳鉄だと熱を持ちすぎてしまったり、脆かったりしますが、炭素鋼は熱をしっかり保ちながらも反応が速くて、スコーチング(焦げ付き)のリスクも減らせます。ステンレスと違って、熱がムラなく均等に伝わるのもポイントです。
不純物の入ったリサイクル鋼は一切使っていないので、そこも安心できるところです。焙煎は、温度をほんの数秒単位で上げ下げする瞬間があるので、この反応性の良さは本当に大事だと思います。
あと、全ての部品がアメリカ製ということも特徴です。品質も耐久性も申し分ないです。
すべての部品と素材がアメリカ製なのですか!
メンテナンスや、部品の交換はしやすい設計なんでしょうか?

はい、アメリカ製の高品質な部品を使っていて、長く使える堅牢なつくりになっています。
メンテナンスは非常によく考えられていて、冷却トレイやファンモーター、チャフサイクロンも簡単に外せるので、日々の清掃はとてもラクです。
構造自体はシンプルで、自動化に頼りすぎず、職人の感覚を大事にした設計になっています。自分の手を入れながら、道具として育てていける楽しさがあります。性能だけではなく、使い続けることで信頼感が深まっていく、そんな焙煎機だと思います。
シンプルさと使いやすさを両立してるのは嬉しいですね。
導入の際、電源や設置環境で気をつけるべき点はありますか?

3kg釜までは家庭用の100V電源でも使えます。設置のハードルは低いです。
3kg釜以上の最新モデルでは、独立したモーターを搭載しているため、焙煎と冷却を同時に行う連続焙煎も可能で、小規模な店舗やイベント出店などにも柔軟に対応できます。
あとは、インバーターが搭載されているので、周波数の違いによる制限もなく、50Hzでも60Hzでも問題なく使用できます。
温度計やプローブの設計って、焙煎にけっこう影響すると思うんですけど、そのあたりの精度や位置も、しっかり考えられてるかどうかで、使い勝手が変わってきますよね。

非常に高い精度を誇るPT100タイプのRTDセンサーを使用しています。このセンサーは、熱電対よりも高い感度と安定性を持ち、電気的な干渉に対しても強く、コーヒー焙煎機に最適です。
センサーは、フェイスプレートの下部の1/4に位置しており、ドラムが回転する側、特にコーヒーのカスケードが発生する場所に配置されています。センサーの精度は、ドラムに投入されるコーヒーの量により若干変動する可能性がありますが、焙煎中の最も重要な温度を計測するために戦略的に配置されています。

ラインナップはどのように展開されているんですか?

ラインナップは500gから、3kg、5kg、10kg、それに34kgの本格モデルまで。お店の規模に応じて選べます。
どのようなタイプのロースターにオススメですか?

最も人気のあるモデルで、これから自家焙煎店を始めようと考えている方々に理想的だと思われるのは、3KgのSF6です。このモデルは、小規模なカフェにも適しており、操作が簡単で信頼性があります。
すでに安定した販売実績があって、今使用している焙煎機が需要に追いつかなくなってきたお店には、5Kgや10kgが選択肢となるでしょう。
最終的には、お客様のビジネスの方向性や目標に応じて、最適なモデルの選択が決まります。私たちのおすすめもそのニーズに合うよう適応させます。
この焙煎機の最大のアドバンテージは何だと思いますか?

信頼性や耐久性の面では、San Franciscan Roasterは優位性があると感じています。
もうひとつ大切なのは、反応性の高い構造であること。熱をしっかり保持しながらも、焙煎の要所で温度調整がしやすい機種が理想です。中には熱を溜めすぎて、狙った調整が難しくなるものもあります。
サポート体制も、販売店によっては、自社で販売していない機種には対応しないケースもありますし、代理店が将来的に撤退する可能性もゼロではありません。いざというとき、メーカーから直接サポートが受けられるかどうかは、事前に確認しておいた方が安心です。

それでいうと、万が一のトラブルに備えたサポート体制はどんな感じでしょうか?

サポートは私たちが直接行います。一部の地域には提携している技術者がいるので、必要に応じて対応が可能です。
まずは、お客様に問題の内容をご連絡をいただいてから、SNSやメールを通じて画像や短い動画をお送りいただくようお願いしています。初期診断の結果、多くの場合はリモートでの対応で解決可能です。それでも解決が難しい場合は、現地での技術サポートを手配します。
より高度な対応が必要な場合には、本社のサポートも受けながら、できるだけ早く焙煎機が通常通り稼働できるよう全力を尽くします。
日本でSan Franciscan Roasterの代理店を立ち上げることになった背景について教えていただけますか?

私がブラジルで育ち、コーヒーへの情熱を持つようになったのは、特にアルタ・モジアナやセラード・ミネイロ地域のスペシャルティコーヒー農園を訪れることから始まりました。この地域のハニープロセスや発酵技術は、私に大きな影響を与えました。
日本に移住した後、ブラジルのスペシャルティコーヒーを使った自家焙煎を大阪で立ち上げ、少し後に焙煎機を取り扱う仕事に就くことになりました。そこで出会ったのがSan Franciscan Roasterです。このブランドの「品質」と「精度」に対するこだわりは、日本のロースター職人にも強く共感されるものであり、私自身も大変魅力を感じました。
日本のコーヒー業界には、常に高品質を追求する姿勢が根付いています。San Franciscan Roasterが提供する耐久性や卓越したロースティング機器は、まさに日本の市場にぴったりだと確信しています。
San Franciscan Roasterの魅力を日本のコーヒー業界にどう伝えていきたいと思っていますか?

日本のコーヒーシーンに紹介するために、ブランドが持つ職人技と精密さを強調したいと考えています。これらは、日本の職人精神や細部へのこだわりと共鳴しますし、ミニマリストデザインやコンパクトなサイズ感は、日本の空間スタイルにもぴったりです。
耐久性や優れた品質を強調することで、長く信頼できる設備を求めるローカルのロースターやカフェオーナーにとっても魅力的な選択肢になると確信しています。

実際に焙煎機を触って試せる機会は今後予定しているのでしょうか?

大阪でデモ用のスペースを探しているところです。そこでは、実際にロースターを見ていただいたり、試し焼きができるようにする予定です。
あと、San Franciscan Roasterを使っているお店とのコラボも考えています。これにより、お客様との接点を増やし、製品を実際に体験していただける機会を提供できると考えています。
- Tags