Only Roaster(オンリーロースター)

レシピを「届ける」という発想——ロースターの設計を再現するxBloom

製品
2026/05/11
xBloom

コーヒーの味は、誰が淹れるかで変わる。そんな前提を、xBloomは見直そうとしている。ロースターが設計した味を、レシピごと再現し、そのまま届ける。それを可能にするのがこのプロダクトだ。

xPodsを使えば、レシピカードを読み込み、カップを置くだけ。あとは準備をしている間にコーヒーが出来上がる。最小限の手間で、設計通りの味が再現される。このバランスの良さが、新しい体験を生んでいる。

今回は、日本でxBloomの展開を担うGIESEN JAPAN代表の福澤由佑さんに、その背景にある考え方と可能性について話を聞いた。

従来のマシンとは何が違うのか

編集部

〈xBloom〉の取り扱いを決めるきっかけになったのは何だったのでしょうか?

福澤由佑

これは「なぜ代理店として取り扱うに至ったのか」という話にもつながります。

僕が〈xBloom〉を知ったのは、2024年の終わりから2025年の頭くらいでした。最初に見たときは「かっこいいコーヒーメーカーだな」という印象でしたが、当時のモデルは初代の〈xBloom Original〉で、15〜16万円ほどの高級ラインで。コンセプトは良いものの、「ニッチな人しか買わないだろうな」と感じ、その時点では関わるイメージはありませんでした。

編集部

最初はそこまでポジティブな印象ではなかったのですか。

福澤由佑

そこから1年くらいを経て、グローバルのセールス担当であるTia(ティア)さんから、日本でも代理店を探しているという話があって、改めて検討することになります。ただ、最初の印象もあって、ちょっと違うかなと感じていました。

そんな中で紹介されたのが、新しいモデルの〈xBloom Studio〉で、実際に触れてみると印象は大きく変わりました。箱を開けてから抽出までの一連の流れが非常にスムーズで、アプリとの接続や操作も直感的。豆を入れればすぐにコーヒーが淹れられる、その体験の完成度に強く惹かれました。

「これは体験として非常に優れている」と感じたことが、取り扱いを考える大きなきっかけになりました。

福澤 由佑
福澤 由佑 (ふくざわ ゆうすけ)。GIESEN JAPAN代表。広告代理店やマーケティング会社からキャリアをスタートし、米ロサンゼルスでコーヒーの魅力に取り憑かれる。日本帰国後に友人から引き取った5坪のコーヒースタンドから独学で自家焙煎を始める。モノづくりへの興味もあり、中古焙煎機のメンテナンス事業をきっかけにGIESENの日本総代理店となり現在に至る。
編集部

単なるドリップマシンではないと感じたのは、どんな部分でしたか?

福澤由佑

既存のドリップマシンとの決定的な違いでいうと、まずコンセプトの部分が大きいと思います。

〈xBloom〉は、ハードウェアとして見るとミル・ケトル・スケールが一体になっていて、みんなが欲しかったものを詰め込んだコーヒーマシンとも言えます。もちろんそれ自体も新しさではあるのですが、それ以上に特徴的なのはソフトウェアや設計思想の部分だと感じています。

〈xBloom〉は、ロースターのレシピやコーヒー体験を、より手軽に家庭やオフィスで楽しめるようにすることを大きなコンセプトにしています。さらにそれを世界中のロースターとつないで、グローバルに共有していくような構想も持っています。

編集部

抽出だけではなく、体験全体を見ているんですね。

福澤由佑

そうですね。実際にそれを実現できる仕組みがあり、アプリケーションの完成度や、抽出にどこまでこだわれるかといった点もかなり作り込まれています。コーヒーに関わる人が納得する、それがちゃんと詰め込まれた印象です。

ロースターのようにレシピや味わいを届けたい人も使うし、美味しく飲みたい人達も使う。そこが、他のコーヒーメーカーとは根本的に違うところだと思います。

編集部

送り手と受け手、両方を見ている。ロースターが、抽出まで含めて届ける感覚に近いんですかね。

福澤由佑

そうそう、届けたい側も使えて楽しい。

この仕組みを軸にしたエコシステムが広がっていくと、価格帯が10万円前後というハードルはあるんですけど、これまで以上に楽しめる体験が増えていったら。

結果として、「コーヒーって美味しいよね」と感じるシーンがちょっとずつ増えていく。その積み重ねが、いわゆるスペシャルティコーヒーのマーケットも広がっていくんじゃないかと思うし、こだわる人とそうでない人の境界線が薄れていくんじゃないかと思っています。

編集部

かなりプロダクト志向が強そうですよね。開発者はどういう方なんですか?コーヒー関係者とか深い関わり合いがあるとか?

福澤由佑

〈xBloom〉を運営しているのは、TBDxというサンフランシスコの会社なんですけど、代表はRichard(リチャード)とRui(ルイ)の2人で、もともとどちらもAppleで働いてました。

Appleでは共にハードウェアとソフトウェアのプロダクトデザインチームに所属し、デザインや開発に携わっていたというバックグラウンドがあって、2人ともコーヒーが好きであることから、スタートしたスタートアップです。

編集部

なるほど、バックグラウンドがかなりユニークな。

福澤由佑

開発するときに、ちゃんとプロフェッショナルの声を聞いて、それをプロダクトに反映して。

例えば、OnyxのファウンダーAndrea AllenとかScott Raoとか、初期の〈xBloom Original〉の開発には、いくつかの著名なロースターやプレイヤーが関わっていました。そうした人たちと思想的にも近い状態でプロダクトが作られていた印象があります。

実際、オリジナルモデルはアルミボディで、どこか道具としての手触りのようなものも感じられる仕上がりでした。

その後の〈xBloom Studio〉では、性能面は大きく進化しています。一方で、プロダクトとしての完成度が上がる中で、そうした手触り感や、初期に関わっていたメンバーとの距離感には、わずかな変化も出てきているのかもしれません。

xPodsがつくるコーヒー体験

編集部

〈xPods〉というのは、レシピごと豆を閉じ込められたカプセルのようなもの、ということでいいんですよね?

福澤由佑

はい、そうです。

〈xPodsは、単なるカプセルではなく、ロースターのレシピと抽出体験そのものをパッケージした存在です。

付属のカードにはRFIDチップが内蔵されていて、本体にタッチするだけであらかじめ設計された抽出設定が読み込まれます。

レシピと豆を一緒に楽しんでもらうっていうことがコンセプトですね。

xPods
ドリッパー・紙フィルターと一体になったカプセル〈xPods〉。従来の粉末カプセルとは異なり、豆がそのまま入っている。
編集部

面白い!できそうでできなかった仕組みですよね。

福澤由佑

そう、今までみんな考えてたと思うし、実際にやりたかったことでもあると思います。ハードウェアは作れても、ソフトウェアまで含めて完成させるのが難しかった。その点で、ハードウェアとソフトウェアのバランスの良さが、〈xBloom〉の操作体験につながっていると感じます。

箱を開けてコーヒーを淹れるまで、何ひとつエラーが発生しないっていう体験って、このスムーズさが、面倒さを感じさせない理由だと思います。

編集部

〈xPods〉と通常の豆使用では、どのくらい体験が違うと感じますか?

福澤由佑

一番の良さを感じるのは、やっぱり〈xPods〉の体験です。僕も使ってみて、そこが大きいと感じます。

もちろん通常の使い方も悪くはなんですけど、豆を量る工程と、淹れた後に器具を洗う必要がある。この2ステップは、僕らのような慣れている人にとっては気にならなくても、多くの人にとっては「面倒」と感じるポイントになりやすいと思います。朝の忙しい時間帯だと、なおさらです。

編集部

確かに、その工程は意外とハードルになりますよね。

福澤由佑

その点、〈xPods〉を使えば工程は極限までシンプルになります。〈xPods〉を開けて、レシピカードを読み込ませて、カップを置くだけ。あとは準備をしている間にコーヒーが出来上がっている。

手間は最小限なのに、しっかり美味しいコーヒーが飲める。この体験のバランスが非常に優れていて、「これが一番いい形だな」と感じました。

編集部

手軽さとクオリティのバランスが、このプロダクトの核になっている気がしました。

xPodsでの抽出

xBloom
ホッパーにコーヒー豆を入れる。一杯分の中に、焙煎・挽き目・抽出設計までがすべて内包されている。
xBloom
〈xPods〉に付属するレシピカードをタッチして抽出設定を読み込む。
xBloom
ボタンひとつで、全工程が自動でスタート。
xBloom
設定に応じた粒度で豆を挽く。
xBloom
レシピに基づいた湯量・湯温・注湯でドリップ。スパイラル状の注湯も自動制御。
xBloom
すべての工程が終了し、コーヒーが完成。

xPodsなしでの抽出

福澤由佑

〈xPods〉を使わなくても、アプリで抽出できます。設計された一杯と、自分で組み立てる一杯の両方を行き来できるのも〈xBloom〉の大きな特徴です。

xBloom
アプリを使うと、プロの抽出設計を自分で再現・設計できる。
xBloom
付属のOmniドリッパーは、特定の抽出スタイルに寄せるのではなく、レシピによって味づくりをコントロールできる。
xBloom
市販のドリッパーにも対応。再現性ではなく、自由度を取る抽出。

精度を支えるグラインダーの構造

編集部

一般的なグラインダーと比べて、〈xBloom〉のグラインド設計で最も特徴的な部分はなんですか?

福澤由佑

グラインド設計の部分でいうと、正確な情報として聞いたわけではないですが、感覚として、多分テスト段階で浅煎りの豆でテストしているんですよ。

なので、例えばグラインダーはRPM(回転数)を変えれるとか、挽き目も80段階でエスプレッソからフレンチプレスまで挽けるようになっています。トルクの設計もしっかりしていて、浅煎りの豆を挽いても全然つまらないですし、逆に深煎りの豆を挽くと止まることがあって。

編集部

浅煎りを基準で設計されている?

福澤由佑

というのも、グラインダー内では電流値によって豆の状態を判断しているので。豆が入っていると負荷がかかりトルクが発生するため電流値が上がり、逆に何も入っていないと電流値は上がらないので。

深煎りの豆のようにオイルが艶々の柔らかい豆の場合は、挽いたときに負荷が小さく、電流値があまり上がらないことがあります。そのため、稀に「豆が入っていない」と誤認識してしまうケースもあるようです。

編集部

内部の状態を電流値から判断していると。

福澤由佑

なので浅煎りは、かなり攻めた調整ができるようなグラインドの設計になってるかなと思ってます。

48ミリのコニカル刃が入っていて、チタンコーティングによって耐久性も高められています。

家庭用からプロユースまで

編集部

どのようなユーザーに一番使ってほしいプロダクトですか?

福澤由佑

ホームユースを狙ってます。

業務用途での引き合いも増えていて、クオリティとしても十分通用します。ロースターの方にも気軽に使っていただければと思っています。

編集部

業務用としても十分対応できそうですね。家庭用だけでなく、プロ用途も見据えている?

福澤由佑

今年、エンタープライズモデルが出るんです。BtoB向けにヒーター性能を強化して、トレーが従来のプラスチックからステンレスに変更されてます。あとは3年保証が付きます。価格は上がりますが、長期的だとコストパフォーマンスは高いと考えています。

編集部

カフェやロースターも含めて、もう少し広い層を見ているわけですか。

福澤由佑

カフェやロースターには、こちらのモデルの方が安心して使ってもらえると思います。

僕らが本当に届けたいのはライトな層で、これまでコーヒーは飲むんだけどそこまでこだわってなかったみたいな人たちにも、ぜひ楽しんでほしい。この世界をちょっとでも覗いてもらえるようになるといいかなと思っています。

編集部

コーヒーの入り口を広げる役割もあるんですね。

Photos & Interview & Text & Editor: 疋田 正志
Tags