Only Roaster(オンリーロースター)

ロースターの負担を軽減するAIの挑戦──生豆選別機avercasso

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コーヒーの味を左右する重要な工程のひとつに「生豆の選別」がある。欠点豆を除くことでクリーンで安定した品質が得られるが、手作業は時間と手間がかかり多くのロースターの負担だ。そこで開発されたのが、AI搭載生豆選別機avercasso

1粒ずつコーヒー豆の画像を撮影してAIが判別。精製方法ごとに専用プログラムを用意し、多様な生豆に対応することで精密な選別と負担軽減を実現している。

対談では、avercassoの開発背景や技術・導入事例・今後の展望を、アバー・インフォメーションの楊宇萃さんに伺った。

なぜAIで生豆の選別を行うのか

編集部

なぜコーヒー生豆の選別をAIでやろうと思ったのですか?

avercasso

弊社は台湾に本社があり、長年ウェブカメラの開発を手がけてきた会社です。人物の動きや音声を検知・追跡できるAIを搭載したカメラ技術を強みにしてきました。

その技術を応用して、人ではなく豆を認識するコーヒー生豆のAI選別機を開発するに至りました。きっかけは、台湾の社長が大のコーヒー好きだったことで、仲間から生豆の選別が大変だからなんとかならないか、という相談をされたことでした。

avercasso(アバーカッソ)。台湾に本社と製造拠点を置き、教育ICT機器やリモートカメラ、法人向けWebカメラなどの製品を販売する、アバー・インフォメーション株式会社のブランド。新北市に約10,000m²の自社工場を構え、スペシャルティコーヒー向けに高精度な光学式生豆選別機を開発・製造。

高精度な選別を実現する仕組み

編集部

仕組みを実現している技術について教えていただけますか?

avercasso

簡単に選別の流れを説明すると、従来の選別機は一括でスキャンするタイプが多く、スピードは速いものの精度には限界があります。

一方、avercassoは1粒ずつカメラで撮影し、その画像をAIが解析して選別します。99%の精度で良品豆を見極めます。豆が落下する瞬間に合わせて、エアで欠点豆だけを弾き飛ばす仕組みです。

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搭載された4K高精細デュアルカメラとAI画像識別技術により、瞬時に識別。
編集部

AIには、どんなデータや経験を学習させているのでしょうか?

avercasso

台湾本社の研究開発チームにおいて、継続してAIモデルに学習をさせています。

AI選別プログラム構築に使用された機械学習データは、主に台湾、インドネシア、コロンビア、ブラジル、および中南米のいくつかの地域から取得されています。そこから悪い豆を選り分けるために、SCAの欠点豆評価基準や焙煎、選別のプロフェッショナルの助言を参考に、学習させています。

編集部

精製方法の違いによって、選別の基準も変わるのでしょうか?

avercasso

はい、精製方法ごとに生豆の特徴が異なるため、現在15種類の精製方法に対応した選別プログラムを用意しており、今後も増える予定です。

製品にはウォッシュドとナチュラルに対応したプログラムが出荷時デフォルトで搭載されています。オプションで、アナエロビックやハニープロセス、ロブスタナチュラルなどに対応したAI選別プログラムの購入が可能です。

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ナチュラルやウォッシュド、アナエロビックやハニープロセス、スマトラ式など、様々な精製方法に対応したモジュールが用意され、生豆の種類に最適な選別精度を実現できる。

CS OneとCS Lite、2つのモデルの特徴

編集部

CS OneとCS Liteの2モデルがありますが、それぞれの特徴と開発の背景を教えてください。

avercasso

CS Oneは、1時間に約5キロの生豆を選別できます。本体重量は53kg。1粒ずつ写真を撮って判別するため時間はかかりますが、精度重視の設計です。複数店舗展開や卸を行うロースターにとって、手作業のハンドピック負担を軽減する強い味方になってくれるはずです。

編集部

一方のCS Liteは、どんな特徴があるのでしょうか?

avercasso

CS Liteは、1時間あたりの処理能力が2.5kgです。重量は25kg。よりコンパクトで処理スピードは控えめなモデルです。その分、個人運営や小規模なマイクロロースターさんにちょうどよく、スペースや導入コストの面でも取り扱いやすい仕様になっています。

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編集部

導入時のポイントや気をつけるべきことはありますか?

avercasso

エアコンプレッサーとの併用が必要な製品です。 というのも、私たちの選別機は、ダメな豆を認識した際に、空気の力で弾き飛ばす仕組みを採用しているためです。

エアコンプレッサー自体は弊社製ではありませんので、導入の際はお客様にご用意いただく必要がありますが、私たちがこれまで検証を行ってきた、日本国内メーカーの信頼できる製品をご紹介できますので、安心してご相談いただければと思います。

編集部

実際に導入されたお店からは、どんな声や反応が届いていますか?

avercasso

日本各地から多くのご評価をいただいています。中でも印象的だったのは、「今まで自分の主観だけで豆を見ていたために、品質を落としていたことに気づいていなかった」という声です。ハンドピックとCS Oneで選別した豆を焙煎・飲み比べた結果、CS Oneの方が圧倒的にクリーンだったとのことでした。

他にも、「以前は焙煎量に追われて店に張り付いていないと間に合わなかったのが、avercassoのおかげでちゃんと帰れるようになった」という話もいただきます。導入によってハンドピックの負担が減り、チームでの役割分担や焙煎スケジュールにも余裕が生まれたそうです。

もちろん課題もあります。精度99%という数字は、裏を返せば残り1%の改善余地があるということ。カメラが豆を捉える瞬間に向きが変わることで検出漏れが起きたり、逆に細かく取りすぎて歩留まりやコストに影響が出たりすることもあります。私たちは現場の声を取り入れながら選別プログラムをアップデートし、どう使えば最大限活かせるかをユーザーと一緒に探っています。

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編集部

精度の強弱はできないんですか?

avercasso

確かに、つまみを捻るように強弱をつけられればいちばん良いのですが、それを数値化して学習させるなどの技術的困難があり、今のところ実現できていません。現在はSCAが定める欠点豆の基準をもとに選別を行っており、その中でカテゴリ1の重大な欠点だけを取るのか、あるいはカテゴリ2の軽微な欠点まで含めるのか、といった精度レベルをユーザーが選べる機能を開発中です。

もともと選別プログラムは、ウォッシュド・ナチュラル・ハニーなど精製方法ごとの特徴に合わせてプログラムを調整しています。例えばアナエロビック精製では発酵により豆の色が変わりますが、ウォッシュド基準で見ると「欠点」と判定されてしまいます。そこで、精製方法ごとに基準を調整することで、こうした違いに正しく対応できるようにしているんです。

将来的には、ロースターさんごとの焙煎スタイルや求めるクオリティに合わせ、より柔軟に調整できるようにしていく予定です。

導入効果と課題、広がる活用の可能性

編集部

どういうロースターに使ってほしいとかありますか?

avercasso

製品開発の一番のきっかけとなったのは「ハンドピックが大変」という声でした。そこを解決したい思いがavercasso誕生の原点です。特にマイクロロースターやこだわりのある焙煎士の方々に使ってほしいです。量が少なくても選別には時間と手間がかかるため、人件費や時間の節約に役立ててほしいと思っています。

人の主観に頼らず客観的に選別できるのもavercassoの強みだと考えています。将来的には、この豆はavercassoで選別されたものとして、ある種の品質の証のようなブランドにもなれたらと思っています。

編集部

コンパクトなサイズの生豆選別機はあまり見かけないので、導入が増えてくるのか注目ですね。あとは価格ですかね。

avercasso

価格については、欲しいけれど資金面で難しい、というマイクロロースターの声を多くいただいています。そこで、リースサービスや価格面での相談にも柔軟に対応し、デモ機の貸し出しも開始しました。購入を急ぐのではなく、まずは実際に使ってみて、焙煎や店舗運営にどんな変化があるか体感してほしいと考えています。

デモ機の貸し出し期間は3週間から1ヶ月程度。導入による時間の使い方の変化や、人件費削減の実感を得られるはずです。言葉だけでは伝わりにくい価値も、実際に使ってみることで理解していただけると思います。

avercasso
サンプル豆で選別された、良品豆(左)と欠点豆(右)。
編集部

この先数年で、AIを使った選別機が業界のスタンダードになる時代は来ると思いますか?

avercasso

日本市場では、もっとコンパクトにできないかという声が多く、スペースの制約を考慮して導入しやすいサイズを目指しています。将来的には、自分の店でも使えると多くの方に選ばれ、最終的には“みんなが使う”機械になれば嬉しいです。

ちなみに昨年のSCAJでは「肩こりの救世主」というあだ名もいただきました(笑)。生豆のハンドピックで肩が凝るのをマッサージするのではなく、そもそも凝らせない、選別させない存在が理想です。

編集部

導入後のサポートやフォロー体制はどうなっていますか?

avercasso

avercasso製品には専任担当者が常駐し、機器の使用方法や不具合に関する相談に対応しています。原則として、電話・メール・Webミーティング等で初期対応を行い、その後オンサイト対応の要否を判断いたします。

不具合が確認された場合は、原則センドバック方式で修理を実施します。地域によってはオンサイト対応となる場合もあります。

CS One、CS Liteともに1年間の無償修理保証を提供しております。製品ユーザーマニュアルや機器クリーニングマニュアルに沿った正常な使用状態で発生した故障であり、人為的な外観破損がない場合に限り、無償修理を行います。

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編集部

スポンサーとして大会に関わることになったのには、どんな狙いがあったんですか?

avercasso

今回、1ST CRACK COFFEE CHALLENGEのスポンサーとして声をかけていただきました。

予選では、様々な業種の企業様がスポンサーとして参加していましたが、選別に特化した製品のメーカーは初めてだったんです。そういった中で、私たちのような新しい技術を使った選別機で一緒に大会を盛り上げたい、という思いで参加させていただきました。

今回、競技会で使用された生豆麻袋30kgを、実際にCS Oneで選別させていただきました。1時間に5kgのペースで、5〜6時間で選別が完了しました。連続稼働ももちろん可能です。

編集部

大会に参加することで、選別の重要性や効果をより多くの人に実感してもらうことができるので、実際の現場での活用が注目されそうですね。

avercasso

私たちの最大の目標は、選別工程をコーヒーの重要なプロセスとして正しく位置づけてもらうことです。

選別は「味が良くなった」「品質が上がった」といった結果が伴わなければ意味がありませんが、その評価はどうしても主観に左右されがちです。だからこそ、こだわりを持つ方々には、私たちの選別機が持つ可能性や相性を感じ取っていただけると思っています。

選別機の良し悪しは、単に選別できるかだけでなく、その人の選別観や考え方と合っているかどうかも重要です。主観に頼らず客観的に選別したい方や、一度選別に対する考え方を手放してみたい方には、特におすすめしたい機械です。

Photos & Interview & Text & Editor: 疋田 正志
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