Only Roaster(オンリーロースター)

北欧生まれ、日本で進化。SteepShotという抽出器具

製品
2026/03/18
SteepShot

ノルウェーで生まれた抽出器具SteepShot(スティープショット)。日本では旧モデルのディストリビューターでもあったホシカワカフェの代表・鈴木洋介さんが改良を加え、V2として国内で製造されるようになった。

熱湯と密閉による圧力を利用した構造は、短時間でも未抽出になりにくく、コーヒーの甘さを引き出しやすいという特徴を持つ。その設計思想や味わいの魅力、開発の背景について話を聞いた。

浸漬と蒸気圧を組み合わせた抽出器具

編集部

SteepShotはどんな抽出特性を持つ器具ですか?

鈴木洋介

熱湯と密閉による圧力でコーヒーを抽出する器具です。

SteepShot(スティープショット)
鈴木洋介(すずき ようすけ)。北欧のコーヒー合同会社,HSKWKF(ホシカワカフェ)代表。2009年、埼玉県熊谷市に〈ホシカワカフェ〉をオープン。県内でもいち早くサードウェーブの流れを汲む浅煎り中心のコーヒーを提案してきた。2019年にはコーヒースタンド〈conscience(コンサイエンス)〉を開業。自治体との公民連携事業なども行う。
編集部

どんなコーヒーを目指して設計された器具ですか?

鈴木洋介

元々、ノルウェーで開発された時は「30秒で誰でも簡単に美味しいコーヒーが淹れられる」というコンセプトでした。

しかし、私が使った印象では、「誰でも」や「簡単に」という器具の枠では表現できない奥深さを感じました。そこでV2では「クラフトコーヒー」や「抽出体験」をテーマにしたコーヒーを目指して作り直しました。

編集部

ペーパードリップやエアロプレスなど、他の抽出器具と一番違う点はなんですか?

鈴木洋介

コーヒーの抽出器具はたくさんありますが、実は「抽出時に、素材に圧力をかけたままの状態を保持できる器具」というものは多くありません。

エスプレッソもエアロプレスも圧力で抽出できる器具ですが、圧力をかけたまま保持をすることが目的ではなく、あくまでも、圧力は素材にお湯を透過させる段階での手段です。一方で過抽出には気をつけていただきたいと考えています。

最近はハーブティーや紅茶を抽出される方からのフィードバックもいただくのですが、ハーブティーなどは過抽出してもしっかりとエキスが抽出されるので、それはお勧めです。

SteepShotが生み出す味わい

編集部

味の特徴はどんな方向性になりますか?

鈴木洋介

一番の特徴は「甘さ」だと感じています。

熱湯による圧力と密閉は、短時間の抽出でも未抽出になりづらいため、焙煎のクオリティーを確認するためのツールとしてもお勧めです。

推奨レシピ

SteepShot(スティープショット)
構成するパーツ一式。シンプルな構造ながら、この組み合わせが独特の抽出を生み出す。
本体を余熱した後、95°C以上のお湯を200〜230ml注ぐ。
15gのコーヒーを中粗挽きにして入れ、スプーンで3回ほぐすようにかき混ぜる。
リッド(蓋)をしっかり閉めてそのまま40秒、逆さにし50秒待つ。
デフレクターを開いて抽出、コーヒーが落ち切ったら完成。
抽出したコーヒー。金属フィルターのため、わずかに濁りのある仕上がり。

再現性と焙煎との相性

編集部

抽出の再現性についてはどう考えていますか?

鈴木洋介

「スケールとタイマーを使用する」「器具をしっかり予熱すること」「お湯からコーヒー粉の順番で入れる」、この3つを意識していただければ、かなり再現性を担保できると考えています。

編集部

意外とシンプルなんですね。

鈴木洋介

あと、こだわったのが説明書に入れている漫画です。少し難しそうに見える器具ですが、ポイントさえ押さえれば再現性高く淹れることができます。親しみを持って使っていただけたらと思い、漫画という形にしました。

SteepShotの漫画版ガイド
同封の漫画版ガイド。手順を視覚的に理解できるため、理想の一杯に迷わずたどり着ける。
編集部

どんな焙煎のコーヒーに合いますか?

鈴木洋介

元々ノルウェーで生まれて、Tim Wendelboeがディストリビューターを務めていたくらいなので、基本的には浅煎りのコーヒーとの相性が良いように感じています。 深煎りの豆は浅煎りと比べると水分が揮発しているため、焙煎豆の硬度が柔らかいことが多いように感じます。そうするとステンレスフィルターでは微粉が多くなる可能性もあります。

ステンレスフィルターと併せてペーパーフィルターもご使用いただくことで強くなる苦味を抑えることができるかもしれません。あるいはバイパス(加水)することを前提に抽出いただくことで、味わいの可能性も広がると期待しています。

エアロプレス用のペーパーがそのまま使用可能
エアロプレス用のペーパーがそのまま使用可能。金属フィルターとの併用で、さらにクリアな味わいへ。

北欧で生まれ、日本で進化

編集部

SteepShotが日本で製造されることになった経緯を教えてください。

鈴木洋介

元々、旧モデルのSteepShotのディストリビューターをしていました。

中国で製造され、ノルウェーに納められた商品を輸入して全量を手作業で検品していく中で、いつからか、自分たちで作ってみたいと考えるようになりました。

編集部

ノルウェー版からどのような改良をしましたか?

鈴木洋介

外装と内側のセラミックコーティングです。 剥き出しのステンレスですと、食品検疫などのコストを抑えることができますが、やはり味わいが少し金臭い印象が出てしまいます。 「30秒でコーヒーが淹れられる簡単便利な器具」ではなく「自分の好みのコーヒーの知らなかった魅力を引き出す器具」としたかったので、内側のセラミックコーティングは必須でした。

また、デフレクターアーム(蛇口部分のキャップ)に「支え」を兼ねた取り外し可能なハンドルを付けました。これにより、抽出時に逆さにしてサーバーやカップに置けるようになっています。

細かい部分ではラバーバンドの硬度を上げ、たわまないように短くしたり、火傷防止のために噴出口を小さくしたり、スクリューの溝を細かくしています。

本体を洗う時にガスケットの紛失のお問い合わせも多かったので、デフレクターアーム内に埋め込みました。

SteepShot(スティープショット)
左が改良を加えた日本製V2、右がノルウェー版のSteepShot。外装や内部構造には細かな違いが見られる。

SteepShotが目指す理想の一杯

編集部

SteepShotで理想の一杯とは?

鈴木洋介

甘さと質感です。 私はエチオピアのコーヒーのようなストーンフルーツ系の味わいが好きなのですが、SteepShotで淹れた浅煎りのコーヒーは、「桃のポタージュ」や「炊き立ての杏ジャム」のような印象を表現できます。

編集部

どんな人に使ってほしい器具ですか?

鈴木洋介

抽出にこだわりを持っている人に使ってほしいと考えています。特に「素材の味わいや魅力を最大限引き出したい」と考えている人におすすめです。

最初はコーヒーの抽出器具としての使用にフォーカスをしていましたが、ハーブティーや紅茶、ほうじ茶の抽出とも相性が良いことがわかってきました。

一方で、お湯と素材さえ入れれば細かいことを気にせずとも美味しいコーヒーが作れるカジュアルさも兼ね備えているため、「作業をしながら簡単に日々のコーヒーを淹れたい」という人のお役にも立てると考えています。

編集部

SteepShotのこれからについて教えてください。

鈴木洋介

将来的にはSteepShotチャンピオンシップも視野に入れています。

SteepShotは「自分の好きなコーヒーと向き合える」器具だと考えています。まさに皆様のお気に入りのコーヒーの知らなかった一面を引き出すために使ってほしいです。

今回ご紹介したSteepShotは、オンラインストアでも取り扱い中です。
conscience(コンサイエンス)
SteepShotの正規販売店であり、鈴木さんが手掛けるコーヒースタンド〈conscience〉。独自の視点によるコーヒーの楽しみ方を提案し続けている。
Photos & Interview & Text & Editor: 疋田 正志
Tags