語り手: 店主 / 阪田 正邦
焙煎日本一が教える、技術・情熱そして学びの場を広げるコーヒーの世界
「まったくの手探りでやり始め、絶望的な気持ちになりました」。そう振り返るのは、KOTO COFFEE ROASTERSの店主・阪田正邦さん。2017年6月に、奈良の橿原市で店をオープンする3カ月前から独学で焙煎を始めたものの、その道のりは決して順風満帆ではなかった。転機は、世界大会の公式焙煎機でもあるギーセンの導入。全国のロースターとの交流が深まるにつれ、試行錯誤を重ねながら焙煎技術を磨いていった。そして2019年、ジャパンコーヒーロースティングチャンピオンシップ(JCRC)で、2度目の挑戦にして日本一の座を掴み取る。「味で見ていた焙煎を、今では化学変化を理解して論理的に行えるようになってきました」。かつて迷いながら続けた焙煎は、いま確かな技術へと昇華された。
2020年には奈良・五條の古民家へ焙煎所を移転。オンライン販売を中心に、週末だけ玄関先で豆の販売を行うスタイルへシフトした。200グラム以上の購入でドリップコーヒーを1杯サービスするというシンプルな仕組みも、「いい豆を買ったら、その場で味わいたい」という思いから生まれたもの。さらに、焙煎技術の追求だけにとどまらず、ワークショップやセミナーにも力を入れている。「焙煎は技術だけじゃなく、理論を知ることでより楽しくなる」と、全国のロースターやコーヒー愛好家へ向けた講座を精力的に開催。自身の経験を共有することで、コーヒーの世界をもっと深く、広く届けている。
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