語り手: 店主 / 佐野 真
故郷に世界水準のコーヒーを届ける挑戦
「バックパッカーとしてベトナムを訪れた際、スラム街にあるコーヒー屋台に通っていました。そこでは、差別や偏見のない空間が広がり、コーヒーが生み出すコミュニティに衝撃を受けたんです」。そう語る佐野真さんがコーヒーの道に進んだのは、この経験がきっかけだった。Roasteria Orchardでバリスタ兼焙煎士としてキャリアを重ねたのち、2023年に独立。生まれ故郷である山梨県富士川町に〈真庵〉をオープン。「地方ではまだ美味しいコーヒーを飲める機会が限られています。そんな地域で暮らす人たちに、世界水準のコーヒーを通じて笑顔を届けたいという想いを込めて故郷に店を構えました」と振り返る。浅煎りから深煎りまで常時5種類のコーヒー豆を揃え、希少な農園から直接仕入れる豆や信頼できるインポーターの豆を厳選、ここでしか味わえない一杯が提供される。
佐野さんの焙煎スタイルは、科学的な数値と感覚を融合させたアプローチが特徴。「アグトロン値というカラーの指標で焙煎度合いが科学的に管理され、味わいを設計する手法が世界では主流になっています。焙煎と密接に関係するカッピングスキルも、科学的な分析が求められる重要な技術です。しかし、ここ山梨では焙煎やカッピングを学べる環境がほとんどありません」と課題を語る一方で、「世界に通用する味作りを目指しながら、次世代にその技術を継承できる環境を築いていきたい」と力強く展望を示す。地域に根ざしつつもグローバルな視点を持つ、未来を見据えた挑戦の場となっている。
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