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1ST CRACK COFFEE CHALLENGE 予選カッピング後インタビュー

1ST CRACK COFFEE CHALLENGE

2025年9月13日(土)に決勝ステージを迎える、35歳以下の若手焙煎士の発見・育成を目指す焙煎大会1ST CRACK COFFEE CHALLENGE。決勝進出をかけた予選カッピングには、全国から24名の焙煎豆が集められ、提出されたコーヒーをサンプルと照らし合わせ、決勝へ進む6名を選出するための評価が進められた。本年度は競技者自身も同じテーブルに立ち会えるオープンカッピング形式を採用し、審査員と出場者が同じ場でカップを覗き込み、微細な差異を探るという新しい試みとなった。

ジャッジを担ったのは、JCRCの日本代表トレーナーも務めるRoast Design Coffeeの三神亮さん、スターバックス コーヒー ジャパンのロースターでJCTC2024年大会準優勝の木戸田直子さん、昨年行われた1ST CRACK COFFEE CHALLENGE KOREAの初代チャンピオン、カン・ジヒョンさん。

今回の記事では、この予選カッピングを振り返り、三人の審査員にその難しさや手応え、そして年々高まるロースターの実力について語ってもらった。

サンプル焙煎について

三神 亮

今回のサンプルの焙煎については、浅煎りを志向する方が多いのではないかと思い、NOG COFFEE ROASTERSのヘッドロースター藤城さんと相談して、サンプルも浅煎り寄りの方向性に設定することにしました。

使用した焙煎機は15kg釜で、1バッチ3kg投入という制約がありました。その条件では必然的に焙煎時間が短くなってしまいます。そこで「短くなるのは前提」と割り切ったうえで、限られたプロセスの中でどうロースティングスキルを発揮し、味をコントロールするかを考え、甘さを引き出すアプローチを取りました。

甘さを出す方法として最もシンプルなのはメイラードを長く取ることですが、それだけでは工夫がなく面白みに欠けます。今回は、カラーチェンジから1ハゼまでのメイラード区間を意識し、大きな釜の特性を踏まえて少し前倒しの操作を試みました。

具体的には、明確なカラーチェンジが始まる直前、排気のRoRが跳ね上がる瞬間に初期ドライを極め、その後火力を落として進行を整えます。ただしそのまま進めるとフラットな風味になりやすいため、1ハゼ直前のアロマが最も発達するタイミングで再び火力を戻し、甘さとフレーバーの両立を狙いました。

三神 亮

ジャッジによる総評

三神 亮

第一回からジャッジさせていただいていますが、年々レベルが上がってきて嬉しい反面、大変な作業になってきたなと。

これだけ多くの方がサンプルに近づけてきたのは、業界のスキルの高さを証明してるんじゃないかなと思いますね。逆にこちらがジャッジされてるみたいで(笑)

木戸田 直子

私は第2回大会から3年連続でジャッジを務めさせていただいていますが、今年もやはり難しさを感じる一方で、ロースターとしてワクワクさせていただける貴重な時間となりました。

人間の感性と感覚というのは磨き続けなければなりませんが、それを科学的分析と合わさることで、まだまだ広がる可能性があります。そして、人間しかできない部分を磨き上げること自体がチャレンジングで、とても面白いと感じています。

カン ジヒョン

サンプルと競技者の豆の仕上がりが非常に近く、判定はとても難しかったです。それだけに、参加者一人ひとりのスキルの高さが際立っていたと思います。

どのカップも完成度が高く、わずかな違いを見極める作業は難しくもありましたが、その分、この競技会を通じて業界全体のレベルの高さを実感できる時間になりました。

三神 亮

皆さん総じてクリーンで整ったカップを仕上げてきていて、その点がとても印象に残りました。もちろん中にはわずかにクリーンさに欠ける部分が出ることもありましたが、全体として非常にレベルが高く、素晴らしいと思いました。

木戸田 直子

私も去年と比べると、今年の方が少し難しかったように感じました。昨年は、こういう焙煎をしたんだなと想像できるポイントがいくつか見つけやすかったのですが、今年はそうした手がかりが少なく、判断に迷う場面もありました。それでも美味しいカップが多く、全体としてレベルの高さを改めて感じました。

木戸田 直子
三神 亮

去年と比べると、今年のサンプルコーヒーは味わいの方向性が大きく異なっていました。

大会の趣旨としては、提出されたサンプルにできるだけ近づけることが求められます。

今回のサンプルは、去年とは味わいの方向性が異なっていました。昨年は少し変わった、通常の焙煎ではあまり見られないアプローチがあり、その挑戦的な焼き方も印象に残っていました。

木戸田 直子

アプローチの方向性自体は問題ないのですが、去年とはやはり違った印象を受けました。

カン ジヒョン

多くの豆はサンプルに非常によく似ており、競技者の高い実力が感じられました。

カン ジヒョン

サンプル再現度のジャッジ

三神 亮

審査では、一番美味しいものを選ぶのではなく、一番サンプルに近いものを選ぶことが求められます。これは難しい作業ですが、経験を重ねるとカップ全体の印象からある程度判断できるようになります。

似ているようで微妙に違う部分もあり、ここは近いけれど、この点は違うと感じることも多い。その違いを確認するためには、スコアシートの各項目を丁寧に見ていくことが有効です。たとえばこちらの方がグリーン感が強いといった違いを掴むことで、似ている中にも明確な差が見えてきます。

木戸田 直子

今回に関しては、やはり評価の軸がぶれてはいけないので、メインとなるカップのキャラクターをしっかりと掴むことを意識しました。

自分の中ではこのくらいの温度感という基準を2パターンほど持っていて、同じ温度帯で比較しながら、そのギャップを手がかりにキャラクターを把握していきます。そうして得られた印象を結び合わせることで、サンプルが示すキャラクターをより正確に理解するようにしています。

カン ジヒョン

サンプルが持っているキャラクターをしっかり感じ取り、そのうえで参加者のコーヒーと比較しました。

今回のサンプルでは特にスイートネスが際立っていたのですが、参加者のコーヒーではそのスイートネスが少し違って表れることがありました。サンプルが持つスイートネスと一致しないと、その時点でこれは違うとはっきり判断できました。

1ST CRACK COFFEE CHALLENGE
三神 亮

24カップの中で、2つほどはサンプルに非常に近い仕上がりでした。全体的に見ても、多くのカップがサンプルに寄せてきている印象を受けました。

その中で、1カップだけは明らかにアンダーディベロップの状態でした。興味深かったのは、それがガスクロマトグラフィーによる分析評価では弾かれなかったという点です。

木戸田 直子

グリーン感が強く出ているものや、逆にローストがサンプルよりも強く乗っているものもありました。最初は「自分の感覚が間違っているのでは?」と思い、何度も確認を繰り返しました。とてもサンプルに似ていると感じたカップも、もしかしたら舌の疲れでそう感じているのかもしれないと疑い、違うカップに戻っては改めて口に含み、見直すことの繰り返しでした。そのプロセス自体がとても面白かったです。

三神 亮

結構自分のバイアスがかかるんだよね。同じコントロールでも向こうとこっちだと、なんかこっちの方が心理的この酸味感じやすかったりみたいな。この辺をこう逐一直しながら、バイアスを外しながやっていった。

カン ジヒョン

24カップを一通り確認していく中で、これはサンプルにかなり似ていると思えるものが2、3個ありました。

1ST CRACK COFFEE CHALLENGE

分析と感覚、ロースティングに活かす可能性

三神 亮

ある程度の枠組みの中で評価を行えば整合性を保ちやすいので、個々の感覚に頼るよりも、科学的なアプローチを取り入れた方が良いのではないかと思います。一般のお客さまが味わうレベルではそこまで細かく意識されない部分も多いと思いますが、その意味でも科学的手法は汎用性が高いと感じました。

カップによってはクリーンさにばらつきが出ることもあるかもしれませんが、極端な深煎りやアンダーディベロップといった方向ではなく、一定の範囲に収めるためのツールとしては有効だと思います。

木戸田 直子

人間の感覚は順応していくからこそ、迷いもあるので、そういう意味では、数値として可視化された結果に自分の感覚を合わせていく方が正しいのかもしれないと感じました。

一方で、すべてを機械に任せるのではなく、私たち人間がジャッジに関わる意味も考えなければなりません。データをうまく活用しながらキャリブレーションしていくことで、ぶれない基準と、人間ならではの「美味しい」と感じる感性を重ね合わせれば、より良い評価につながるのではないかと思いました。

カン ジヒョン

サンプルの種類が多い分、後半に進むほど本来は一層集中すべきなのに、どうしても集中力が落ちやすいと感じました。その中でいかに精度を保つかが、ジャッジとして大切な課題だと思いました。

三神 亮

今回の審査を通して、ジャッジとしての精度だけでなく、自分自身の感覚を再確認することができました。参加者たちの高い技術を見るたびに、業界全体が日々進化していることを実感します。この経験を今後の焙煎や評価に活かしていきたいと思います。

木戸田 直子

ジャッジとしての時間は大変ではありますが、同時にとても刺激的で貴重な時間でした。参加者たちの挑戦や工夫を間近に感じることで、自分自身の感覚や技術も磨かれる機会になります。こうした場を通じて、業界全体のレベルがさらに上がっていくのを感じられるのは、本当に嬉しいことです。

最終順位

  • 1位 榊大介 / FUKUSUKE COFFEE ROASTERY 168点
  • 2位 清水栄治 / Haiz coffee roastery 156点
  • 3位 小笠原慶 / サワラコーヒー 155点
  • 4位 森本孝史 / ミドルアースコーヒー 154点
  • 5位 竹中秀人 / Donate Coffee 150点
  • 6位 佐々木風帆 / ICOI COFFEE 148点
(2025年9月15日追記)
1ST CRACK COFFEE CHALLENGE

決勝ステージ

日時
2025年9月13日(土) 12:30〜20:00
場所
東京カルチャーカルチャー
東京都渋谷区渋谷1-23-16 cocoti SHIBUYA 4階
スケジュール
12:30 会場
12:30〜15:00 ファイナリストコーヒー試飲&ゲストブリュー
15:00〜17:00 競技スタート
17:00〜18:30 ラテアートチャレンジ&ミニブリューイング大会
18:30〜20:00 結果発表/表彰
20:00 閉会
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Photos & Interview & Text & Editor: 疋田 正志
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