電気式の衝撃。Aillioが変えた1kg焙煎機の常識
電気式焙煎機は、長らく「本格的ではない」と見られてきた。そんな中で登場したAillioは、電気式でありながら、理論的なプロファイル管理と十分な火力を両立させた。開業希望者からプロのロースターまで、選択肢そのものを広げた存在と言っていい。
その変化を早い段階で体感していたのが、R&D ESPRESSO LAB代表の本田心さんだ。代理店になる以前、一人のコーヒーマンとしてAillioを使い、「普通に焼ける」と感じたという。そこから、電気式に対する見方は大きく変わっていった。その確信が、のちに日本国内の正規販売を担うAillio Japanの立ち上げへと繋がっていく。
Aillio Bullet R2 PROという完成形
〈R1 V2〉の後継モデル〈R2 PRO〉って、どう評価していますか?
本田心
新しい〈R2 PRO〉が出て、実際に触って〈R1 V2〉も良かったけど、完全にアップデートって感じで。「完全上位互換」といっても過言ではない。
僕自身、何もない状態で焙煎をやろうと思って〈Aillio〉を選んだのは必然でした。ラボに置くなら、〈R2 PRO〉ですね。ビビりました。予約から時間が空いて、キャンセルも出ました。それでも待っている人がいる。触ってみて分かる、これは本当にいい。電気式でここまで来たか、というレベル。メンテナンス性も向上しているし、ベースがしっかりしていたからこそ作れた完成形だと思いますね。
クオリティは間違いない。これからは「選ぶ側の覚悟」が問われる。
〈R1 V2〉ユーザーにとって〈R2 PRO〉は、どこが一番違うと感じましたか?
本田心
1キロの焙煎機で1キロ浅煎りをやると火力不足でタイムが伸びるんですけど、〈R2 PRO〉は余裕なんですよ。最大1.2kg入れても火力に余裕がある。8分台まで持っていけるパワーがある。
細かいクオリティの詰めはこれからですが、ハゼの力強さや熱の入り方は圧倒的。〈R1 V2〉もよかったけど、3〜40万差足して、この性能なら〈R2 PRO〉を選ぶかもしれない。
価格は80〜90万円台になると聞いています。それでも選ぶ価値があると?
本田心
これまで〈Aillio〉でさえ躊躇していた層にとっては、簡単に出せる金額ではない。
でも、月150kgが見えている人にとっては、時間と再現性を買う投資になる。クオリティはすでに証明済み。問題は覚悟だけ。ここが分岐点になると思います。

Aillioとの出会いと、電気式の衝撃
6〜7年前、電気式焙煎機の状況はまったく違っていました。
本田心
当時は電気式のサンプルロースターがIKAWAしかなくて、その後ぐらいに追いかけるように、1キロ焼ける電気式が出たってのを聞いて。
最初はピンときてなかったんですけど、「結構焼けるよ」って言われて、借りて使ってみたら、これが普通に焼ける。しかもアプリでプロファイル管理もできて、火力もしっかりしていて、8分から10分で仕上がる焙煎機ってのがわかって、「これやばいわ!」ってなったんです。
それが〈Aillio〉だったんですね!
本田心
そうです!
その時にサンプルロースターの営業してたので、僕自身が前の職場で、50〜60gしか焼けない電気式サンプルロースターの営業してたことがあって。でも小容量だと、既存の機械をひっくり返すまではいかなかったんですよね。
その知識を持ったまま、〈Aillio〉で焼いたら「これ完璧だ」って思って。ガスもいらない、コンセント一つで焼けて、それで浅煎りもちゃんといける。「これ、バケモンじゃん」って。実際に買って、バケモンでしょ、これ笑

ほんの3年ほど前なんか「電気式なんて」って思われてましたけど、この数年で変わりましたね。
本田心
「電気式は火が入りにくい」みたいな感じで言われてたんですけど、〈Aillio〉でちゃんとできるようになった。普通のIHじゃない、かなりのハイパワーで伝導効率のいいIHを使ってたっていうところが魅力の1つですね。
普通に焼けちゃった、それはでかいなと思って。プロが使ってるようなプロファイルを、理論を使って焼くことができる焙煎機ってのは今まで存在しなかった。
それまでにも電気式の焙煎機はありましたけど、〈Aillio〉は何が決定的に違ったのでしょうか。
本田心
当時、ボタンひとつで焼ける安価な電気式焙煎機はすでにありました。でも〈Aillio〉は、テストスプーンで豆を確認できて、ハゼの音を聞いて、温度を追いながらディベロップを組み立てられる。プロがやってる理論的な焙煎を、そのまま再現できたんです。
自家焙煎文化が根強くて、マイクロロースターの多い日本では、「自分たちの焙煎で味をつくる」という価値観が浸透しているので、プロがやっているような「ここから何分ディベロップを取る」といった理論的なやってる感が、日本人にはものすごく刺さった。
しかも、電気だけで設置できて、1kg焼けて40万円台。当時100万円前後が当たり前だったカテゴリーの常識を、一気に引き下げた。技術だけでなく、導入のハードルそのものを壊した存在だったと思います。
〈Aillio〉と同じ土俵で比較される機種は、あまり多くない印象ですが。
本田心
そうですね。〈Aillio〉に関しては本当に、PCBの制御なので、言ってしまったらハイテクですよね。焙煎機って構造自体はシンプルなので、大体ドラムがあって、火があって、モーターがある。あと温度センサーで測る、ぐらいですかね。
今では温度センサーを軸に制御するとか、回転数を制御するっていうのがあるんですけど、〈Aillio〉はテクノロジーが進化して、昔高かったものが中国経由でパーツができたりして安くなった結果のイノベーションですよね。焙煎機を今の時代で作り直したっていう感覚はあります。
他にも小型焙煎機がある中で、なぜ〈Aillio〉だけがこれほど長く注目を集め続けているんですかね?
本田心
電気式って、場所を選ばない。ガス式だと設置場所や排気とか、条件が必要になる。もちろんガス式にも良さはありますが、それを踏まえても導入のハードルが圧倒的に低いってのが、電気式の強みですね。
サイズ感もちょうどいい。開業を視野に入れる人にも、「ちょっとやってみたい」という人にも届く。日本で人気の1キロ釜って、「黄金の一択」じゃないですけど(笑)。エントリーとして一番ちょうどいい。だから流行るんだと思います。
あとはプロファイルコントロールですね。価格とクオリティはある程度比例すると思ってるんですけど、温度や回転数を管理しながら、自分の理論を落とし込める焙煎機ってめっちゃ限られている。
使っているうちに「あと少しアジャストすればできそう」って自分の理論が落とし込めるっていうのがすごくいいですね。そこが決め手じゃないですかね。
向いている人・向いていない人
どんなロースターが〈Aillio〉に向いていますか?
本田心
まず、エントリーユーザーには全体的に刺さりますよね。導入しやすいし、サイズ感もちょうどいい。
プロの方でも、店だけで使って卸をしないとか、高い豆を少量で回す設計なら、最初の一台として現実的に選びやすいと思うので、予算化に合わせて選びやすいっていうのが多分あると思います。
逆に向いてない人は?
本田心
逆にミスマッチなのは、電子制御への理解がない場合ですね。
若い世代はデジタルに慣れているので、エラーが出ても「これは何のエラーか」「どこが原因か」がある程度わかる。でも、それが分からないと「この焙煎機は使えない」となってしまう。
実際はメンテナンス不足だったりするんですけど。電子制御の仕組みを理解して、細かなメンテナンスができるかどうか。そこが向き・不向きの分かれ目だと思います。
そのような慣れていない方が導入することはありますか?
本田心
ありますよ。メンテナンスをせずに、壊してしまう人は。
逆に言うと、〈Aillio〉ってすごく安全なんですよ。ガス式は火を使う以上、火災のリスクがあります。ダクト清掃を怠ってチャフが溜まってきて、そこに引火して火事が起きるとか。昔から現場で働いていて、定期清掃が当たり前になっている人なら問題ない。でも、その意識がないと危ない。
電気式も、まったく火が出ないわけではありません。排煙温度が上がればチャフに引火する可能性はある。なんですけど、セーフティーがしっかりしているので、一定温度になった時にアラームが出るとか、異常がある場合は動かない。
ちゃんと指示通りに使っていれば壊れることはないし、電気式はそういう設計なので安全性が担保された上で、使い手の理解が問われる。

焙煎機からの火災という例もありますよね。
本田心
火がつくケースって、清掃不足で排煙ダクトの詰まりが原因っていうのはあります。
メリット・デメリットはあるけど、〈Aillio〉は、ガイドライン通りに清掃できてる人はほんとに長く使える。実際、ものすごいバッチ数を回している人がいて、深煎りも。「1日何十バッチしてんの?」って、それでもめちゃくちゃ綺麗なんです。清掃も必ず毎回やって終わって次の日に備えてってやってる。
できる人は、ずっと使い続けられる。できない人は、できない。機械である以上、メンテナンスは必須です。むしろガス式以上に、仕様に沿った管理が求められる。ガス式に比べると、仕様ごとのメンテナンスは多いと思うんです。本来はガス式もそうあるべきなんですよね。
デジタルっていうところで、そこが理解できない人はちょっと難しいんじゃないかと。
味・熱源特性の本質
〈Aillio〉ならではの味の出方を感じる瞬間はありますか?例えば、他の熱源と比べてフレーバーや質感、クリーンさにどう影響すると感じているとか。
本田心
適正に焙煎されたコーヒーは、浅煎りでも深煎りでもすごくクリーンで、雑味がほとんどなく、綺麗に仕上がると思います。プロファイル次第ではありますが、ネガティブが出にくい焙煎機ですね。
逆に、コントロールできないとアンダーになったり、火が入りきらないところもあるんですけど、そこは熱と時間の理解の問題だと思うので、そこを理解できれば、あまりいじることなく安定してクリーンな焙煎は実現できます。
それは熱源の違いが影響している、ということですね。
本田心
逆に苦手と感じるところは、ガス式に比べると、複雑さや立体感は出しにくいんだろうなという印象はあります。質感や奥行きという点では、蓄熱の強いマシンとは火の入り方が違うので、味の出方は若干違うと思いますね。
逆にそれはそれでいい意味でクリーンに焼けるっていうところですね。「これ〈Aillio〉で焼いたんだ」と言われるまで分からないですね。
シンプルに良さが出る。綺麗に仕上げられる焙煎機ですね。
スキル不足を補うのか、それとも実力の差が出るのか
〈Aillio〉は、使い手のスキル不足を補ってくれるマシンですか?それとも、実力の差が思いきり出てしまうマシンですか?
本田心
家電量販店で売っているような焙煎機は、ボタンひとつで一応焼けますよね。知識がなくても20分待てば形にはなる。でも、その焙煎が本当に良いかどうかは、結局ユーザー次第だと思うんですよ。
〈Aillio〉は、プロが使っても十分なコントロール性を備えているので、火力はもちろん、ドラム回転数やファンの強さまで調整できる。あとはプロファイルをグラフで確認できるので、理論的に判断できる。
その分、完全初心者には少し難しいかもしれません。焙煎の進行や温度帯の理解がないと、最初は戸惑うと思うんですけど。ただ、それを補強するものとして、ROAST WORLDっていうサイトで、世界中のユーザーのプロファイルが見られる。条件も公開されているので、参考にしたり、ダウンロードして基準にすることもできる。
デジタル操作がまったく苦手だと少し厳しいですが、使えさえすれば、エントリーユーザーにもかなり優しいです。

使いながら成長できるかどうかも、焙煎機選びの重要なポイントになるということですね。
本田心
例えば、知り合いのプロファイルをもらって焼いてみる。「美味しい」と言われたものを基準にして、自分で飲んでみる。そこで「ちょっと違う」と感じたとき、どこをどう直すかを考える。そのアプローチを理解できるようになること自体が、スキルだと思うんです。
前半の火力が弱いのか、投入温度が低いのか。そういうことが分かってくると、〈Aillio〉は一気に使いやすくなる。
逆に言うと、〈Aillio〉で適正に焙煎できるようになれば、EASY STERはめちゃくちゃ簡単になります。蓄熱も火力もしっかりしているので、ほとんどいじるところがない。〈Aillio〉を使いこなせるなら、EASY STERはすんなりいける。まさに「イージー」なロースターっていう意味なんで。本当に、楽すぎるくらいです。
ビジネスの限界ラインとサイズアップ論
ビジネスの環境として、どこか境界線になると考えていますか?
例えば、オンラインの副業や小規模なカフェの自家焙煎なら完璧だけど、月間の焙煎量でいえば、どのあたりが一つの分岐点になるのか。
本田心
月に200kg焼いている人もいましたけど、100kgが見えてきた時点で、次の焙煎機の候補を探した方がいいですね。
1kg釜に1kg入れて浅煎りの前提で話をすると、火力が分散して理想の仕上がりになりにくい。400〜500gで回して月150kg、それで卸までやるとなると、時間を犠牲にして、1回50バッチとか焼いてるってこと聞いたんですけど。もう働き方として間違ってますね。
ロースターの仕事は「回数をこなすこと」ではない。豆のポテンシャルを理解して、サンプルで方向性を決め、プロダクション用のプロファイルを確立する。そこが一番重要です。プロファイルが固まれば、あとは再現性と品質管理の仕組みづくり。それがヘッドロースターの役割だと思います。
日本では焙煎回数をこなすことが美徳になりがちですが、本当に大事なのは効率と再現性です。月150kgが見えているなら、早めにステップアップする。ラインを見極められるかどうかが、経営と焙煎の分かれ目じゃないですかね。
稼働量が増えると、焙煎機そのものへの負荷や耐久性の面も気になってきますね。
本田心
仕事って、時間だと思うんですよね。焙煎回数をこなすことに時間を使っている場合じゃないですか。本当は、カフェやロースターとして考えなきゃいけないことが山ほどあるはずなんですけど、過程を一番大事にするのはダメだなと思いますね。そこは時間をかける場所じゃないんですよね。
お金をかける時には投資すべきで、コーヒー屋ってビジネスだと思うので、環境を整えて、今まで50かかっていた労力が20になるなら、その方がいい。効率化して生まれた時間を、もっと重要なことに使うべきだと思います。
限界までやって「もう無理だ」となっている人も見てきたことがあるんで、そこは、最初から設計をしてやるべきだなとは思いますね。
焙煎量の限界を見誤ると、技術ではなく時間で勝負する状態になってしまうということですね。

本田心
1日55バッチを週2、3回やっていた人がいるんですけど、彼が6キロ釜に変えたとき、「いや、あれは間違ってました」と言ってました。
〈Aillio〉が流行ったことで、ある程度できてしまうから、それでずっとやってて。ビジネスが成長しても設備投資を後回しにしてしまう。ここにミスマッチが起きるんです。
本来投資すべきタイミングで投資しないまま、無理を続けてしまうロースターは結構いると思います。〈Aillio〉がない時代であれば、3キロや5キロを持っていたはずなんで、そう考えると、昔の方がビジネスとしては正しい姿だったかもしれない。
そんな「苦行」をしなくてもいいんじゃないかと思いますね。成長に合わせて、きちんと投資する。だったら借りてでも、整えるべきときは整えるべきだと思います。
これだけのクオリティの焙煎機が、現実的な投資で導入できる時代になった。
本田心
と思うんですけど、みんなサイズアップしていきますね。せめて2キロ、できれば3キロ。
自分のお店だけで回すなら問題ない。でも卸まで考えるなら、やっぱり生産に耐えられる焙煎機の方がいいと思います。
1バッチを最高に美味しく焼くことについては完璧なマシンだと思いますが、1日何時間も毎日焙煎して、同じクオリティで焼き続ける耐久性や再現性についての点はどう評価されますか?
本田心
やろうと思えば、できますね。
ただ、メンテナンスの頻度は上がるので、実際、55バッチを週2、3回やってたレベルの人がいるんですけど、最高のクオリティを出すために1回380gでやり続けていた人がいました。20バッチ終わったらしっかり清掃して。
メンテナンスさえやれば、そこまで回せます。
その意味で、〈R2 PRO〉の登場はどう映っていますか?
本田心
〈R2 PRO〉は〈R1 V2〉のネガティブなポイントをほぼアップデートしています。以前は最大加熱レベルが9段階までしかなかったのが14段階まであります。〈R1 V2〉のように最大投入量を投入しても時間が伸びる事はなく、8分や9分で仕上げることも可能です。
間違いなく最高に良い焙煎機の一つになると思います。
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