Only Roaster(オンリーロースター)

本物のチョコレートドリンクを日本に広めたい!メルボルン発のMörk Chocolate(モークチョコレート)

2022.02.26
西泉あかり

「カフェの街」として知られるメルボルンでは、ホットチョコレートをはじめとするチョコレートドリンクが、ほとんどのカフェで提供されている。多くの店で愛されているこの甘い飲み物は、カフェ文化の楽しみを広げる重要な存在だ。

そんなチョコレートドリンクの人気を支えるのが、コーヒーカルチャーから影響を受けて誕生したホットチョコレートブランド、Mörk Chocolate(モークチョコレート)。オール・ナチュラルな素材にこだわり、上質なカカオを使用したこのブランドは、メルボルンのカフェ文化と深く結びついている。

今回は、モークチョコレートの日本代理店代表を務める西泉あかりさんに、ブランドの魅力やその背景について話を伺った。

モークチョコレートの種類と特徴

編集部

モークチョコレートでは、どのような種類のチョコレートが用意されているのでしょうか?具体的には何種類くらいありますか?

西泉あかり

4種類あります。大きく分けるとカカオの含有率の違いです。

Junior Dark 50%
カカオパウダー、ココナッツブロッサムシュガー
Original Dark 70%
カカオパウダー、カカオマス、ココナッツブロッサムシュガー
Even Darker 85%
カカオマス、カカオパウダー
Dark Milk & River Salt 65%
カカオパウダー、ダークミルクチョコレート、ココナッツブロッサムシュガー、リバーソルト

西泉あかり
西泉あかり。モークチョコレート株式会社代表。2年半オーストラリアのメルボルンにてスペシャルティコーヒーを取扱うカフェにてバリスタとして勤務。帰国後、日本のカフェでのイベント企画やバリスタトレーニングなどの活動を行う。2019年にオーストラリアのスペシャルティチョコレートドリンクブランドMörk Chocolateを設立し、日本に広める活動を行っている。
編集部

なるほど、それぞれカカオの含有率が違うんですね!それぞれの特徴や味の違いについて、詳しく教えていただけますか?

西泉あかり

国ごとにチョコレートの好みにも違いがあり、アジアの地域では、やや濃いめの味が好まれる傾向があります。ただし、濃いめだからといって苦いわけではありません。たとえば「Original Dark 70%」は、フレッシュな果実を思わせる風味が特徴で、飲んだ人からは「意外と苦くない」との声が多く寄せられています。

「Even Darker 85%」は、より高いカカオ含有率ですが、ただ苦いわけではなく、レーズンのように凝縮された深い風味が楽しめます。特に日本ではハイカカオが好まれるため、85%は人気の高い一品です。

一方、ロンドンでは「Junior Dark 50%」が人気を集めています。オーストラリアではかつて、カカオ20~30%の甘いチョコレートが主流でしたが、モークチョコレートではカカオ本来の味わいを楽しんでほしいという思いから、まず70%を開発。その後、お子様や甘いものを好む方にも楽しんでいただけるよう、「Junior Dark」が誕生しました。

編集部

このホットチョコレート、とても豊かで素晴らしい香りがしますね!まるでカカオの深い風味がそのまま湯気に溶け込んだようで、香りを楽しむだけでも幸せな気分になります。

ホットチョコレートの魅力と淹れ方

西泉あかり

そうですよね!

実は、このホットチョコレートの美味しさを最大限に引き出すため、各ショップには取り扱いの際に特にお願いしていることがあるんです。

それは、作り置きをせず、お客様の注文ごとに丁寧に淹れてもらうようにしていることです。淹れたての香りや風味がそのまま楽しめるのが、このホットチョコレートの大きな魅力なんです。

西泉あかり
編集部

オーストラリアでは、モークチョコレートを取り扱っているカフェは多いのでしょうか?

地元でも多くのカフェに愛されているイメージがありますが、実際のところ、どれくらい広まっているのか気になります。

西泉あかり

メルボルンのスペシャルティコーヒーが楽しめるお店では、モークチョコレートを使っているところが非常に多いですね。

特に、上質な素材を重視するカフェにとっては、モークの風味豊かな味わいがコーヒーとの相性も抜群で、高い評価を受けているようです。

モークチョコレートが広まったことがきっかけで、メルボルンでは他にもさまざまなクラフトチョコレートブランドが誕生するようになりました。コーヒー文化が根付く街ならではの影響力といえるかもしれませんね。

メルボルンでの経験と日本での代理店設立のきっかけ

編集部

あかりさんが働かれていたカフェでも、モークチョコレートは使われていたんでしょうか?

西泉あかり

はい、私がメルボルンで働いていたカフェでも、モークチョコレートが使われていました。コーヒーももちろん好きですが、疲れたときにはホットチョコレートを飲んで甘さに癒される、そんなひとときを楽しんでいました。

日本に帰国してから、こちらでココアやホットチョコレートを飲んでみたのですが、どうしても「何かが違う」と感じてしまって。日本でもモークチョコレートを楽しめる場所があればいいのになと思っていたところ、メルボルンでのご縁がつながり、お声がけいただいたのをきっかけに、この取り組みをスタートしました。

編集部

まさにタイミングが良かったですね。その流れで、モークチョコレートの日本代理店を始めることになったんですね。

西泉あかり

メルボルンでは2年半カフェで働いていたんですけど、ビザが終わって帰るタイミングで何かしたいなと思ったんです。メルボルンに行ったことの意味、なにかできることないかなって思ったときに、日本の各地にメルボルンのカルチャーのお話ができたらいいな、という思いがあったんです。

私と友人たちで、SC Melbourneというチームを作って10店舗ぐらい仙台から熊本までコーヒー屋さんをお借りして、巡らせていただきました。その時は、メルボルンカフェカルチャーのお話をさせていただきたいっていうクラウドファンディングをしたんです。

私はメルボルンでコーヒーを学んだので、日本のコーヒーカルチャーは自分の好きなカフェを巡るくらいの感覚でしかなくて。いろいろな地域のコーヒーショップ事情も知りたいし、こちらからお伝えできることは伝えるという相互メリットがあったと思います。

編集部

モークチョコレートは、コーヒーカルチャーの影響を受けて生まれたのですね。

モークチョコレートの製造背景とコーヒーカルチャーとの関係

西泉あかり

そうですね!モークチョコレートのオーナー夫婦は、奥様がスウェーデン出身のショコラティエで、旦那様はオーストラリア・アデレード出身のバリスタという経歴を持っています。

彼らがオーストラリアで生活する中で、コーヒーは産地にこだわりを持ちながら、チョコレートにはその産地が明確でないものが使われている現実に疑問を抱くようになりました。そして、産地が分かるチョコレートを使い、甘さだけでなくカカオ本来の風味を感じるホットチョコレートを提供したいという奥様の思いが合わさり、モークチョコレートが誕生しました。

北欧では、ホットチョコレートもカカオにこだわり、質の高い素材で作られることが多いんです。

編集部

モークチョコレートはメルボルンで作られてるんですか?

西泉あかり

パウダーにするのは工場でできないので、他の場所に依頼してやっていますが、その他の工程に関しては全てメルボルンの小さなファクトリーやってます。

編集部

カフェモカの場合は、コーヒーとの相性によって酸味の感じ方が違いますが、どれも美味しいですね。

西泉あかり

コーヒーとの相性によって、酸味の感じ方が違いますね。

編集部

メルボルンでバリスタをされていたとのことですが、他に苦労されたことはありますか?

西泉あかり

言語の壁とカルチャーの違いですね。メルボルンに行った当初、私の英語は中学校で習う程度の単語しか知らなかったので、コミュニケーションにはかなり苦労しました(笑)。

シェアハウスに住んでいて、わからないことがあったら、その日一日の会話を振り返り、「ああ、こういえばよかったんだ」と後から調べて覚えていくという繰り返しでした。幸いにも日本人の友人がいたので、どうしても分からないときは助けてもらうことができました。最初に住んでいたシェアハウスには、韓国人、台湾人、コロンビア人など、さまざまな国の人がいたので、異なる文化に触れることができ、それもいい経験でした。

編集部

コロンビア人ですか。

西泉あかり

夜はパーティーを下でやっている時も多くて。こっちは寝たいのに。そういう時などやっぱカルチャーの違いを感じますよね(笑)

みんな英語圏ではないところから来てたので、自分たちの国の言語交換みたいな。日本語でこれ何ていうのって聞かれたら、こういうんだよっていうのを英語で説明してあげないといけない。そういうことを繰り返してるうちに、ちょっとずつ英語を学んでいきました。

編集部

共通言語が英語ということですね。仕事は順調にこなせていましたか?

西泉あかり

仕事をしている間、周りのみんなはとても優しくて色々と教えてくれました。特にコーヒーが好きな人たちとは、コーヒーについて深く話す機会も多く、その度に新たな知識を得ることができました。

毎日が勉強のような環境で、常に刺激を受けながら仕事をしていたことは、とても貴重な経験でした。

編集部

そこでモークチョコレートについても知れたわけですね。

西泉あかり

オペレーションにもしっかりと落とせる商品っていうのは、なかなかないと思います。モークチョコレートはパウダー状になっているのが一番強みです。ミルクとスチームを一緒にすると、それだけで溶けてくれるってます。それは忙しいメルボルンの現場に合わせて作られたものというのがあるんだと思います。

Mörk Chocolate
編集部

オーストラリアではチョコレートドリンクはどこでも飲めるんですか?

西泉あかり

オーストラリアでは一般的に飲めます。チョコレートドリンク専門店もあります。

ただ、日本ではコンビニやスーパーで簡単に色々なチョコレートが手に入るので、消費量でいったら日本の方が多いかもしれませんが、カフェでチョコレートドリンクを飲む量では、カフェモカも含めてメルボルンの方がかなり多いです。

編集部

日本では、カフェでチョコレートドリンクはそこまでメジャーではないですよね。固形のチョコレートはよく食べられますが、ドリンクとして楽しむ機会は少ないように感じます。

西泉あかり

モークチョコレートを日本で取り扱いたいと思ったきっかけは、帰国後にカフェでこだわりのホットチョコレートがなかなか見つからなかったことに寂しさを感じたからです。

もちろん、日本でもその美味しいチョコレートドリンクを楽しみたいという気持ちが大きかったのもあります。

編集部

コーヒーと比べると、チョコレートにこだわっているお店はまだ少ないですよね。

西泉あかり

日本はメルボルンほど一つの店にたくさんのお客さんが来ないんです。そしてお店で働いてる人たちがすごく大変そうで、アルバイトの時給もメルボルンのバリスタと比べたら全然低いし。

どうしたらカフェで働いてる人がハッピーになれるんだろう?と考えたときに、そもそもお客さんにたくさん来てもらって、お金をいただかないと自分たちの給料も上がらないなと。なにがコーヒー屋さんでできるかと考えたら、例えばブラックコーヒーは飲めなくてもカフェモカがあれば飲めるというお客さんが増える。主婦で来たくても、お子さんがいるから来れない。けど、ここに来れば甘いものが飲める。

しっかりとした商品で、それで1人でも2人でもお客さんに来てもらえたらいいなっていうのがあって。たくさんのカフェにモークチョコレートがあったらいいなと思い、やってみたいなと思いました。

編集部

現在、日本ではどのくらいの店舗でモークチョコレートが取り扱われているのでしょうか?

西泉あかり

限定の店舗もあるため一概にはいえませんが、おおよそ250店舗ほどで取り扱われていると思います。

編集部

お店に商品が陳列されている様子は、やはりとても魅力的で素敵ですよね。

西泉あかり

一度目にしたら、自然と記憶に残るようなロゴだと思います。たとえ読み方がわからなくても、「あのロゴ、どこかで見たことがある」「あのフェスで見かけたよね」「あの店でも見かけたチョコレートだ」といったように、目にした瞬間に思い出してもらえる。

「美味しかったから、また頼んでみよう」と感じてもらえるような、印象的なロゴだなと感じています。

キャニスターもデザイン性があって紙なので、使い終えた後はペン立てにされてもいいかなと思います。

Mörk Chocolate

家庭での楽しみ方とアレンジレシピ

編集部

おすすめのレシピがあれば、ぜひ教えていただけますか?

西泉あかり

基本のレシピとして、180mlのミルクに対して25gのチョコレートパウダーを加えて、よく混ぜる方法があります。シンプルで美味しいホットチョコレートが楽しめます。

編集部

自宅で買って帰って飲むときも、その通りにすれば美味しくできますか?

西泉あかり

レシピさえ守れば、誰でも同じ味を再現できます。アレンジとして、牛乳を豆乳に変えたり、アーモンドミルクやオーツミルクを使うのもおすすめです。

乳製品にアレルギーがある方でも、豆乳に変えることで安心して楽しむことができます!

編集部

アレルギーのある方も安心して飲めるということですね!

西泉あかり

Dark Milk & River Salt 65%だけは、ダークミルクチョコレートを使用しているため、乳製品が含まれています。

編集部

モークチョコレートでのアレンジレシピはありますか?

西泉あかり

ホットチョコレートがメインですが、アイスドリンクでも美味しいです。

チョコレートは酸味の効いたソースとも相性がいいので、ベリーソースやオレンジソースにも合います。あと夏場はノンアルコールのチョコレートトニックなど炭酸ドリンクもオススメです。

オーストラリア本店では、スモークチップを使用してカフェに居ながら、アウトドアでホットチョコレートを飲んでいるかのような演出のキャンプファイヤーというメニューもあります。

Editor & Interview & Text & Photos: 疋田 正志 
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