語り手: 店主/渡邊 絵美子
ネルドリップの音色が響く、静寂の空間で味わう至福のコーヒー
東京・田町にある名店ダフニで桜井美佐子さんのコーヒーに向き合う姿に憧れ、この世界に飛び込んだ渡邊絵美子さん。阿佐ヶ谷の〈ブラウンチップ〉やレンタルスペースでカフェ運営を行いながら焙煎技術を磨き、独立を果たした。焙煎に対する情熱は、コーヒーを深く理解し、そこに自分の個性を映し出すことにある。3kg窯と小型焙煎機を使い分け、日々丁寧に焙煎されるコーヒーは、苦味と甘味のバランスが絶妙で、「お出汁のような旨味」を感じさせる独特の味わいを生み出している。
さらに、新潟・燕市の鎚起銅器の老舗〈富貴堂〉と共同製作したコーヒードリップポットや、台湾へのイベント出店など、活動は多岐にわたる。こうした取り組みを通じてコーヒー文化の発展を目指し、常に新たな挑戦を続けている。店内はBGMのない静かな空間で、一杯ずつネルでドリップする音だけが響く。手がける一杯のコーヒーは、味わいだけでなく、その所作や空間も含めて、訪れた人に特別な時間をもたらしてくれる。
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