ハンドドリップの美学、目指す理想の一杯──JHDC2018覇者 深浦哲也
3度目のジャパンハンドドリップチャンピオンシップ(JHDC)挑戦で念願の優勝を果たした、Coffee and Baked Uraの深浦哲也さん。その背後には、一度や二度の敗北に留まらない、数えきれないほどの悔しさと、それを乗り越えるための地道な努力があった。
競技者として高みを目指す中で得た気づき、効率を重視した独自の練習法、そして挑戦を続ける中で変化していった目標設定。深浦さんがどうやって自分自身を磨き、最終的に「勝利」という成果を手にしたのか、成功の裏側にあるストーリーを掘り下げる。
また、大会への挑戦がもたらした自身の成長や、日々の仕事へのフィードバックについても、熱い想いと共に明かしてくれた。
大会出場を決意したきっかけ
深浦さんが、ジャパンハンドドリップチャンピオンシップ(JHDC)に出場しようと思ったきっかけはなんですか?
カフェシュクレに入社したのが2015年のことです。当時、ジャパンハンドドリップチャンピオンシップ(JHDC)で優勝した高橋由佳さんが在籍してました。その影響もあって、チャンピオンを輩出しているお店で働きたいと思い入社しました。
具体的に目標を定めて、自分に負荷をかけた方が早くレベルアップできると思い、大会に出ようと思いました。
初めて大会に出場したときは、どんな気持ちで臨みました?その時の手応えや、そこで得た学びとかもあれば。
初出場の2016年大会は、入社後すぐに申し込みがあり、何も分からないままでしたが、今の自分の実力を知るために応募しました。
結果は1回戦敗退で何にもできずに終わりましたが、経験としては次に繋がったと思います。
地道な練習と効率的な工夫
その後の挑戦について教えてください。
2回目となる2017年大会の目標は、去年の自分を上回る為にも最低1回戦突破。お店の業務に追われながらも練習を続け、1回戦は突破しましたが、2回戦で敗退。とはいえ、初出場時よりは納得のいく内容でした。
1回目の時は準備してきたレシピをただやるだけだったんですけど、2回目はある程度レシピを調整しながら考えてできたので、その当時の時点での力は出しきれたと思います。
けど、まだまだ明らかに力不足な事を痛感しました。勝つ為にもっと長いスパンで、具体的に練習に落とし込まないとダメだなと。負けてからすぐに、来年勝つためにどうしたら良いかを考えて、行動に移しました。
勝つためにどんな練習や工夫を取り入れたのですか?
日々のトレーニングで意識したこととか、効率的に取り組むための工夫とかあるんですか。
まず、大会の練習時間に合わせて、1日の休憩時間の中で15分だけ集中して取り組むようにしました。営業後の居残り練習は疲れが溜まりやすく効率が悪いと感じたのでやめました。
練習の記録を表にまとめ、味わい・甘味・酸味・後味・質感みたいな項目を作り、マルバツサンカクで簡易的に毎回自分で評価するようにしました。決勝に勝ち進んだ競技者の動画を研究し、使用する道具や淹れ方の統計を取るなど、徹底的に分析しました。
負担もなく、でも着実に一歩一歩引き出しが増えていく。それを1年通してやりました。
地道な取り組みが実を結んだんですね!
そうですね。それに加えて、コーヒーの淹れ方そのものも見直しました。特に、淹れ方の所作や動作に意味を持たせ、なぜそうするのか、一つ一つ自分の言葉で説明説明できるまでに検証しました。
3度目の挑戦と優勝への思い
3回目の挑戦ではどのような気持ちで臨みましたか?
3回目の目標は、決勝に進んで優勝することでした。高橋さんが優勝した後に自分が店長になった時、コーヒーが美味しくなくなったって結構言われたんです。悔しくて悔しくて、これを見返せるものは誰もが認める結果を出すしかないなと。いつか見返してやると、地道に練習しました。
周囲の反応はいかがでしたか?
正直、誰も僕が決勝に行けるとは思っていなかったと思います。
唯一、妻だけは地道に練習してきた自分の姿を一番近くで見てくれていたので、最初から優勝できるよと信じて応援してくれました。妻には本当に感謝しています。
決勝で結果を残すために、特に注意した点は?審査員や他の競技者との差をつけるために、意識的に工夫したことや取り組んだことがあれば聞きたいです。
まずは減点しないことだなと。減点で進めない競技者が結構いて、せっかく美味しいコーヒー淹れてももったいないので。あとは、審査員に「この人をチャンピオンにしたい」と思わせるような熱意やプレゼンも重要だと感じました。
大会挑戦を通して見えたもの
今回の挑戦を経て得たものは?
大会を通して、技術だけでなく、お客様に喜んでもらうための接客やプレゼンの重要性にも気づきました。大会の練習で得たスキルや工夫を日々の営業に生かしていくことが、最終的にはお客様に喜ばれる一杯に繋がると思っています。
最後に、コーヒーを通じて実現したいことや、最終的なビジョンなど、今後の展望を教えてください。
最終的には独立して自分の店を持つことが目標です。そのために、大会出場や日々の努力を続けていきたいと思います。そして、一人でも多くのお客様に「美味しい!」と思っていただけるコーヒーを提供し続けたいですね。
- Tags